2019 Fiscal Year Research-status Report
保存量をもつ反応拡散方程式とその摂動系-シンプレクティック構造と生物学への応用
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16K05273
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 反応拡散方程式 / 保存量 / 特異摂動法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、外部シグナルの影響下で細胞の極性化現象を理解したいという生物学上の研究テーマにもとづいて、保存量をもつ反応拡散方程式に現れるパルス状局在解が外部からの摂動を受けてどのように運動するのかを調べ、その結果を SIAM Journal on Applied Mathematics vol.78 (2018) , pp.3238-3257 で論文発表した。この論文では、摂動がない場合には周期境界条件の下で定常パルス状局在解は安定であり、付随する線形化固有値問題に現れるゼロ固有値が単純であることを仮定していた。しかしながら、その時点では、ゼロ固有値の単純性が確かめられるようなわかりやすい例がなかった。本年度は、特異摂動法で構成された定常パルス状局在解がそのような例になっているのではないかと考えて、研究を進めることにした。そのための第1ステップとして、保存量をもつ反応拡散方程式で3次関数的な非線形項をもつものを考えて、ノイマン境界条件の下で内部遷移層をもつ単調な定常解を構成し、その安定性を具体的な計算によって確かめることを試みた。ここでは、特異摂動法によって定常解を構成し、エバンス関数を用いて安定性の解析を行うという標準的なアプローチを採用した。これは、旭川医科大学の寺本敬准教授との共同研究であり、得られた結果を2020年2月19日~2月21日に大阪市立大学数学研究所(OCAMI)の共同研究事業(B)の1つとして開催された研究集会「反応拡散方程式と非線形分散型方程式の解の挙動」で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
具体的な計算によって定常解が構成できるだけでなく、安定性の解析もできるということが特異摂動法のメリットである。しかし、その計算を実行することは大変になることが多い。本研究でも計算がうまくいかないときがあったため、研究の進捗状況としてはやや遅れてしまったように思う。
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Strategy for Future Research Activity |
保存量をもつ反応拡散方程式で3次関数的な非線形項をもつものを考えて、ノイマン境界条件の下で内部遷移層をもつ単調な定常解を構成し、その安定性を具体的な計算によって確かめることはできた。しかし、これは1つの例でしかなく、現時点では一般性がないように思える。この例で得た知見をもとに、一般的な非線形項をもつようなものに対する考察を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況がやや遅れており、研究発表できるような結果があまりなかった。そのため、研究発表のために使用する予定の旅費が余ってしまった。研究の進捗状況に依存するが、研究発表のための旅費およびソフトウエア更新のために助成金を使用したい。
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Research Products
(1 results)