2020 Fiscal Year Research-status Report
保存量をもつ反応拡散方程式とその摂動系-シンプレクティック構造と生物学への応用
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16K05273
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞の極性化 / 極性の周期的振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年に、外部シグナルの影響下で細胞の極性化現象を理解したいという生物学上の研究テーマにもとづいて、保存量をもつ反応拡散方程式に現れるパルス状局在解が外部からの摂動を受けてどのように運動するのかを調べ、その結果を SIAM Journal on Applied Mathematics vol.78 (2018) , pp.3238-3257 で論文発表した。この論文では、周期境界条件の下で安定な定常パルス状局在解に対して外部からの摂動を加えた場合に、そのパルス状局在解の運動を記述する方程式をいくつかの仮定の下で厳密に導いた。本年度は、外部からの摂動がない場合であっても、安定なパルス状局在解が不安定化して周期的な振動を起こすことがありえることを擬スペクトル法による数値シミュレーションによって確かめた。とくに、細胞の極性が周期的に反転する現象に対応していると思われる周期的な振動が起きる可能性があることを発見した。また、好ましい外部シグナルに対応する摂動を加えることで、振動するパルス状局在解の空間的なピークの位置がコントロールできることを確かめた。これらの数値シミュレーション結果から、細胞内に拡散の異なる2種類の化学物質があり、その拡散係数に一定の差があれば、初期の一様な細胞から極性をもつ細胞へ発展した後に、その極性が保持されるだけでなく、極性が周期的に振動を起こす現象が観察される可能性があることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行により、研究集会やセミナーなどにおいて対面での研究討論が不可能になり、研究を進めるために必要な情報を得ることが難しくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
保存量をもつ反応拡散方程式において、安定なパルス状局在解が不安定化して周期的な振動を起こすことがありえることを、AUTOとよばれるソフトウエアを用いた数値分岐解析によって確かめる。その不安定化はホップ分岐によるものであると予想されるが、パルス状局在解の振幅が大きいため、厳密な数学解析によってホップ分岐が生じることを示すのは難しいと思われる。AUTOとよばれるソフトウエアを用いると、ホップ分岐が起きることを数値的に確かめることができる。また、これらの結果から、細胞極性の周期的な振動現象が観察されるために必要な条件を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のため、研究集会やセミナーへの対面での参加が不可能になり、出張旅費が余った。新型コロナウイルス感染症の流行が収束すれば、研究集会やセミナーに参加するための出張旅費として使用する。そうでない場合は、研究に必要なコンピュータなどの物品購入費として使用する。
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Research Products
(1 results)