2016 Fiscal Year Research-status Report
非線形偏微分方程式の特異極限問題およびポテンシャルと結合した界面運動の研究
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16K05275
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大下 承民 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70421998)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非線形問題 / 変分問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶粒ドメインの成長やゼブラフィッシュの皮膚の模様のように物質や生物などの自然界には様々な パターンが溢れている。二元合金における相分離現象は自由エネルギー最小の原理という変分原理で 記述され,その時間発展を記述するモデルは勾配流の構造をもっている。この二元合金のように二種類の物質の単なる混合系では,マクロスケールの相分離(領域の分離)がみられる。一方,その二つ の物質が連結しているときには,ミクロ相分離と呼ばれるずっと小さなスケールでの周期パターンが形成されやすい。例えば,ジブロックコポリマーでは体積分率の違いにより,様々な形態のパターンが観測される。 本年度はこのようなミクロ相分離現象を記述するエネルギー汎関数の変分問題を高次元の立方体領域で考察した。界面エネルギーと-m階の高階ソボレフノルムに拡張された非局所エネルギーをもつ太田・川崎タイプのエネルギー汎関数の最小エネルギーのオーダー(ミニマイザーの平均の波長)を求めた。さらにシャープインターフェースモデルにおいても最小エネルギーが2m/(2m+1)次のオーダーになることを示した。比較関数を利用してエネルギーの上からの評価が得られる。また,立方体を小立方体に分割することでできる線形作用素とその共役作用素により,L^2ノルムと界面エネルギー(全変動)およびソボレフノルムに関する補間不等式が示され,それによりエネルギーの下からの評価を得た。空間1次元の場合に最小化関数を具体的に求めることができるかが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミクロ相分離現象を記述する自由エネルギーの変分問題において,リャプノフ・シュミット法により解の存在を考えるためには,平均曲率が一定の曲面の非退化性が必要となるが,それについてあまり多くのことがわかっていないため,非局所エネルギーを摂動とみなして解を構成することが困難であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクロ相分離を記述する変分問題では,小さなスケールでの周期パターンが形成されやすい。平均密度の違いにより,様々な形態のパターンが出現する。この ようなミクロ相分離を記述するエネルギー汎関数として,高階のソボレフノルムのような様々な非局所エネルギーの場合を研究し,ミクロスケールの周期的パターン形成の機構を解明していく。 特に,空間1次元の問題で,界面の個数が2個までなら最小エネルギーを求められるので,一般化して界面がn個の場合に最小エネルギーを求めることができれば,エネルギーの最小を達成する界面の個数および最小化関数を求めることができると考えられる。
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