2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05278
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川崎 英文 九州大学, 数理学研究院, 教授 (90161306)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 離散最適化 / 非線形計画法 / ゲーム理論 / 不動点定理 / 二者択一の定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は最適化理論とゲーム理論の分野において不動点定理と凸解析を軸に連続構造と離散構造の研究を行ってきた.本研究の目的は,離散凸解析の検証をおこない,研究代表者が得た複数個の離散凸集合に対する離散分離定理を手掛かりに離散非線形計画法の構築を図ることである.併せて離散不動点定理の研究をおこなう.平成28年度は以下の研究成果を得た. (1) 離散凸解析では共役関係にあるM凸とL凸という2種類の凸概念が表れるが,どちらも整凸に含まれるため,M凸とL凸を整凸の中で広げ,離散凸解析を拡張できる可能性がある.無限集合の場合,整凸集合の定義が凸閉包をとるものと,単に凸包をとる2通りがあったが,凸閉包をとる定義が妥当であることを確認した. (2) 岩本,木村,植野は2乗和形の関数に対して動的双対化を与えた.本研究では一般の凸関数和に動的双対化を拡張した. (3) Brouwerの不動点定理を用いた離散不動点定理において重要な役割を果たす方向保存条件の研究をおこなった.2次元整数格子の任意の単体分割に対する方向保存条件の特徴づけ定理を,整合的な単体分割の概念を導入することにより,n次元に拡張することに成功した.これにより,n人戦略形ゲームに対する純戦略均衡の存在定理を与えることができた. (4) 非線形計画法では,非線形の関数を線形近似した上で,二者択一の定理を用いて最適性条件を導く.二者択一の定理が「ねじり折り」とよばれる折り紙技法の平坦可折性を研究する際に有効であることを示した. (5) 以上の研究結果を含む形で専門書「均衡と極値の連続と離散構造」を執筆している.現在の総ページ数は290である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄の(1)-(4)で述べた研究成果を,査読付き論文2編として国際誌に掲載予定である.また,1編を国際誌に投稿中など,本研究は順調である.詳細は以下の通りである. (1) 離散凸解析の拡張を図るには,近傍の形状に鑑み整凸性を舞台にするのが自然である.その出発点にあたる整凸集合の定義の確認は最も基本的な事項であると言える.本研究成果を韓国で開催された国際研究集会で発表した. (2) 従来の動的双対化は2乗和の関数について議論されてきたが,本研究では動的双対化を凸関数和へ一般化した.この研究成果は国際誌にまもなく掲載される. (3) 離散不動点定理については,方向保存条件の特徴づけ定理をn次元に拡張することに成功した.ゲーム論的には,これは純戦略均衡の存在定理を与えたことになる.この研究成果は欧文誌に投稿中である. (4) 非線形計画法で重要な二者択一の定理が,ねじり折りとよばれる折り紙技法の研究においても有効であることを示したが,それは二者択一の定理の新たな応用対象を発見したことになる.この研究成果は国際誌にまもなく掲載される.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要欄で述べた事項に関連して以下の課題を研究する. (1) L凸とM凸を整凸の範囲で広げ離散凸解析の拡張を図る. (3) 方向保存条件の特徴づけ自体は完成したと言える.特徴づけは整数格子の単体分割に応じて決まるため,与えられた最適応答写像に対して適切な単体分割を構成できるかどうかの判定方法を研究する. (4) 二者択一の定理の離散化を研究する. (5) 引き続き専門書「均衡と極値の連続と離散構造」を執筆する.
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Causes of Carryover |
当初ノートパソコンを購入する予定であったが,所有するノートパソコンに超高速SSDを搭載することにより計算速度が飛躍的に上がったため購入を見送った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
カナダのケベックで開催される国際シンポジウムの出張旅費として使用する.
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