2018 Fiscal Year Research-status Report
常微分方程式で近似できる構造化生態系モデルの数理的研究
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16K05279
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
今 隆助 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10345811)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コルモゴロフ方程式 / 巡回対称性 / 大域漸近安定性 / 分岐 / 周期解 / 同期軌道 / レスリー行列モデル / 1回繁殖型 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は以下の研究を行った.(i)単一種の1回繁殖型Leslie行列モデルが巡回対称性をもつLotka-Volterra方程式によって近似されることの数学的な妥当性を検討した.これまでの研究で,単一種の1回繁殖型Leslie行列モデルの正平衡点の安定性は,近似によって得られるLotka-Volterra方程式の正平衡点の安定性に一致することが分かっていた.この結果を一般化し,単一種の1回繁殖型Leslie行列モデルの周期軌道の安定性がLotka-Volterra方程式の正ではない平衡点の安定性に一致することを示した.また,その結果を論文にまとめた(投稿中).(ii) 単一種の1回繁殖型Leslie行列モデルの解が巡回対称性をもつKolmogorov差分方程式の解とある意味で一致するための十分条件を与えた.巡回対称性をもつKolmogorov差分方程式で起こるすべての現象(例えば,正平衡点や2周期解のHopf分岐など)が,単一種の1回繁殖型Leslie行列モデルにおいても起こることを明らかにできた.また.巡回対称性をもつKolmogorov差分方程式の特殊なクラスに着目し,そのクラスの解を完全に分類した.この結果により,対応する単一種の1回繁殖型Leslie行列モデルの解の大域的な挙動を明らかにできた.また,周期昆虫に見られる周期的な一斉羽化が大域的に安定な現象として起こりうることを明らかにできた.(iii) 振動的な個体数変動に関する未解決問題を解決するための数理モデルを構築した.また,その数理モデルの基本再生産数や平衡点の安定性などの基礎的な結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究結果を論文としてまとめることができた.この論文で,巡回対称性をもつLotka-Volterra方程式による1回繁殖型Leslie行列モデルの形式的な近似に対して,さらに数学的な妥当性を与えることができ,本研究課題の重要なテーマの1つである振動的な個体数変動を扱うための数学的な基盤が与えられた.また,共同研究により,当初予期していなかった,1回繁殖型Leslie行列モデルの大域漸近安定性に関する成果を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
振動的な個体数変動に関する未解決問題を解決するための数理モデルの解析をさらに進める.その際,これまでに得られたLotka-Volterra方程式および準Lotka-Volterra方程式による近似手法の成果を用い,振動的な個体数変動に関する未解決問題の解決を目指す.この研究の過程で,構造化生態系モデルのどのような数学的な性質に着目することが応用上重要かを明確にする.
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Causes of Carryover |
他の業務との関係で,出張ができなかったため,旅費が余った.次年度の旅費として利用する予定である.
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