2016 Fiscal Year Research-status Report
生物進化を表すマルコフ過程モデルの揺らぎの数理解析
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16K05283
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
若野 友一郎 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (10376551)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スケール極限 / Wright-Fisher過程 / 自然選択 / 偏微分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物進化を表すマルコフ過程として、集団遺伝学でよく用いられるWright-Fisher過程に、頻度依存淘汰を組み込んだモデルをまずは厳密に定義した。このモデルは、Wakano & Iwasa (2013)や Wakano & Lehmann (2014) で記述されたモデルの数学的な記述となっている。確率過程であるので、個体数Nの大きさによって決まる揺らぎが存在している。その揺らぎを考慮した上で、個体数無限大の適切なスケール極限のもとで、このモデルの特徴量(生物学的には形質値の平均値や分散など)が従う決定論的な偏微分方程式を導出した。この偏微分方程式は、従来 Replicator-Mutator方程式として知られてきたものであったが、これが適切なスケール極限のもとでは、自然選択つきWright-Fisher過程を数学的に近似する正しい方程式であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確率論の数学者との共同研究により、進化ゲーム理論を表す自然選択つきWright-Fisher過程の数学解析に成功した。これは、本研究計画が目指す進化生物学分野と応用数学分野の融合の一つの成果であり、今後も積極的継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
適切なスケール極限のもとでは、Replicator-Mutator方程式は自然選択つきWright-Fisher過程を数学的に近似する正しい方程式であることが明らかとなった。しかし一方で、生物学的に妥当なパラメータのもとでは、Replicator-Mutator方程式は個体ベースシミュレーションとは異なる振る舞いを示すことがある。この乖離は、Replicator-Mutator方程式を導くようなスケール極限が、生物学的に常に合理的ではないことを意味している。その理由について、検討していく。
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Causes of Carryover |
既存の計算機環境を継続利用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計算機環境を購入する。
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Research Products
(3 results)