2018 Fiscal Year Research-status Report
生物進化を表すマルコフ過程モデルの揺らぎの数理解析
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16K05283
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
若野 友一郎 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (10376551)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Wright-Fisher process / Wrightの島モデル / 自然選択 / 空間非一様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物進化をあらわすマルコフ過程として、集団遺伝学でよく用いられるWrightの島モデルを出発点とし、そこに島内の相互作用があるモデルを提案した。このモデルでは、島サイズnが有限であることから、確率的な揺らぎが生まれる。島サイズは有限のままに、島の数が無限に存在する状況を考えると、ある島に発生した1個体の突然変異個体は、永遠にその島にいることはできないため、最終的にその島からは絶滅する。絶滅するまでに、何個体の子孫を残すことができるかを計算することで、n個という有限性が生み出す揺らぎが、島の数が無限個あることによって、ある意味で平均化され、最終的に進化がどのような方向に進むのかを解析している。これまでの研究では、島サイズnはすべての島において共通であることを仮定してきたが、本年度はサイズの異なる複数の島サイズが存在するモデルを解析した。前年度までに開発した数理的手法を応用することにより、非一様な有限島サイズがもたらす影響を考慮したうえで、進化的に安定な戦略を解析的に求めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の進化生物学において直感的に議論されていた解析手法を、精緻化することで、これまでに知られていなかった解析解の導出に成功した。これは、本研究計画が目指す進化生物学分野と応用数学分野の融合の一つの成果であり、今後も積極的に継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる島サイズが分散によって結ばれているとき、進化する形質値を明らかとする一般式を求めたが、分散率そのものが進化する場合にも、類似の手法が適用できると考えられるため、これを解析する。 また平行して、2016年度の研究成果からの発展、すなわちReplicator-Mutator方程式を導くようなスケール極限が証明できるのに、この方程式の解は生物学的に妥当でないふるまいを見せるのは、いったいどこに問題があるのかを探る研究も続ける。
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Causes of Carryover |
(理由)2018年度は在外研究で1年間カナダにて研究したため、University of British Columbiaの計算機環境を利用したため (使用計画)計算機環境を購入するほか、これまでの成果を国際学会にて発表する。
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Research Products
(2 results)