2017 Fiscal Year Research-status Report
ケプラー宇宙望遠鏡と星震学手法による不可視連星大質量天体と褐色矮星及び惑星の探査
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16K05288
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴橋 博資 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (30126081)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 星震学 / 連星 / 脈動星 |
Outline of Annual Research Achievements |
連星の観測から求められる恒星の諸物理量は、恒星物理学の基本情報として極めて重要なものであるが、実際には地上観測で得られる連星の情報は、比較的短周期の食連星、短周期ないし中周期の分光連星、長周期の実視連星を合わせても、限られたものであった。連星の主星と伴星の質量比の分布や、軌道離心率の分布などは、連星の軌道進化を考える上で、重要な物理量であるが、統計的解析を行うには、サンプル数が少なく不十分なものであった。 地上からの分光観測が時間がかかるのに比べ、スペースからの測光観測は観測効率が良い。このことに着目して、測光観測から連星の軌道要素を決定することを考えた。具体的には、連星中の脈動星では、軌道運動に伴って脈動の位相が周期的に変動することを利用して、連星の軌道要素を決定する方法を確立した。特に、軌道周期が100日から1000日の範囲の連星は、他の方法では検出が限られており、この方法による検出が有効である。 この方法を使って、ケプラー宇宙望遠鏡のデータのうち、スペクトル分類A型及びF型の主系列星の中から、計2244の脈動星のデータを抽出解析し、341の蝕を起こさない連星を検出して、その軌道要素を決定した。これは、これまで知られていたA型及びF型の連星の総数を大きく上回り、連星のデータを充実させるものである。 これら341個の連星について、不可視の伴星の質量下限(質量関数)を決定した。この物理量は、軌道傾斜角が測れない他が故に本来は質量の下限しか与えないのだが、今回はサンプル数が多いことを利用して統計的手法により、伴星の質量分布を求めることができた。主星との質量比が0.1以下の矮小な伴星も多く検出され、その中には、白色矮星、褐色矮星、惑星も含まれる。中性子星とブラックホールの検出も期待されるが、検出には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脈動の位相変化から連星軌道要素を決定する方法を確立させた。そして、ケプラー宇宙望遠鏡のデータのうち、当初の目標としていたスペクトル分類A型及びF型の主系列星の脈動星は全て解析が終了した。主星との質量比が0.1以下の矮小な伴星も多く検出され、その中には、白色矮星、褐色矮星、惑星も含まれる。中性子星とブラックホールの検出も期待しているのであるが、検出には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ケプラー宇宙望遠鏡は、当初の観測星野を離れ、黄道上の星野を観測するモードに入っている。その新しいデータの解析を進める。 連星の軌道傾斜角の統計的扱いを改め、数学的に新しい解析方法を確立させる。 一方、個々の連星の軌道傾斜角が、Gaiaの位置天文学観測から決定できる可能性がある。軌道傾斜角の決定の方法を検討する。
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Causes of Carryover |
2018年初めに海外研究協力者を訪問し共同で研究を行う予定であったが、相手方の都合により、日程を次年度に変更することになった。次年度には、繰り越した助成金を使用して、海外研究協力者を訪問し共同で研究を行う予定である。
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Research Products
(5 results)