2016 Fiscal Year Research-status Report
メタノールメーザーのゼーマン効果分光実験に基づく星間磁場の精密測定
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16K05293
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小林 かおり 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (80397166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
高木 光司郎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 名誉教授 (60018976)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゼーマン効果 / メーザー / メタノール / 宇宙磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間分子雲中の星形成領域から放射されるメタノールメーザーの分裂が観測されており、その原因として宇宙磁場によるゼーマン効果が期待される。ゼーマン効果の大きさは、分子の遷移ごとに異なり、分子のg因子が既知であれば、それぞれの遷移について求めることができる。しかし、宇宙磁場を決定する際に必要なメタノールのg因子は決定されていない。本研究は、この実験室分光によるg因子の決定と電波望遠鏡観測を目指して行っている。 平成28年度は実験室分光ではセルの長さ30 cmでネオジム永久磁石を用いて約0.7 Tの磁場を印加できる装置を製作し、既存のマイクロ波分光装置と組み合わせて、数10本のメタノールの遷移の分裂を測定することができた。従来の15 cmのセルよりも良好なS/N比の信号を得ることができた。メタノールにはメチル基が水酸基に対して回転する自由度(内部回転)があり、この内部回転の角運動量が回転スペクトルやそのゼーマン効果に影響を与える。ゼーマン効果の解析に対して内部回転による効果も含めた解析を進めており、詳細な解析にはさらに理論的枠組みに改良が必要であることがわかった。 電波望遠鏡による実験室分光に基づいた星間磁場の推定を目指し、まず野辺山45 m電波望遠鏡を用いた試験観測を行った。分裂幅が大きく、観測されれば、より高い精度で磁場の決定が期待できる回転の量子数J, Kが低い108 GHzの遷移について、多数の天体の観測を行った。数天体でメーザーの可能性があると思われたが、強度はそれほど強くないため、他の周波数帯での観測が望ましいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室分光の測定は順調に進んでおり、現在解析を進めている。観測に関しては観測天体や観測周波数に対して再考が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
観測に関して、108 GHzよりも低いメタノールメーザーの方が適当であると判断されるため、VLBIの既存データの活用ができるかの検討を加える必要がある。
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Causes of Carryover |
主に国際会議への出席を変更したこと、当初よりも手作りの部分を増やしたことによる減額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度以降の学会参加費等として活用する予定である。
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