2017 Fiscal Year Research-status Report
一般相対論的ART法による超巨大ブラックホール形成と成長過程の研究
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16K05302
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 労太 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (40513453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 雅之 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70183754)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 輻射流体 / 一般相対論 / ブラックホール / ボルツマン方程式 / モンテカルロ計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究代表者と分担者が開発した一般相対論的講師ボルツマン方程式ソルバーであるARTIST法(R. Takahashi, M. Umemura, 2017, MNRAS, 464, 4567)では、湾曲次空中での輻射輸送方程式を直接数値的に解くことを試みた。このソルバーでは光子散乱の効果は形式的は取り入れることが出来ているが、光子の多重散乱の効果が利き、光子拡散の効果が無視できないような状況は正確には取り扱うことができない。特に、相対論的流体中での光子多重散乱の効果がどのようになっているのかは、よく把握されていなかった。今年度は、当初の予定通り、この問題を解決することに取り組んだ。その結果、相対論的流体中での光子多重散乱を記述する全く新しい解析解を発見することができた。 研究は、光子の任意回数の酔歩を記述する解析的計算とGPU並列計算機を用いたモンテカルロ・シミュレーションの結果を比較しながら進めた。数値シミュレーションでは、約10億個の光子を用いて計算を行い、流体速度を表すローレンツ因子は任意の値で実行できる数値コードを用いた。解析的に書かれた式は、任意の散乱回数、任意の流体速度に対する時空中の光子確率密度関数を表し、モンテカルロ計算の結果を完全に再現することが確認できた。また、モンテカルロ計算では、粒子数の限界から精度よく求めることができない領域の確率密度関数も厳密に計算できることがわかった。この解析式から全ての散乱回数の効果を含んだ光子確率密度関数を得ることもできた。昨年度の段階では、数値的に確率密度関数を記述することを行っていたが、今回、解析的な式が存在し、それが発見されたことは、予想外の結果であった。これらの計算結果の一部は、日本天文学会などで公表し、完全な結果は次の日本天文学会で公表する予定である。また、解析式を計算した論文は現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光子多重散乱の効果を記述する解析式が発見されたことは、当初の予想を大きく上回る成果と判断できるが、解析的計算にやや時間がかかったので、全体の進行状況が少し遅れている。これら両面を考え、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方策として、主に2つ考えている。一つは、光子多重散乱の効果を解析的に記述できる計算技術をより一般的もしくは多様な状況に発展させる方向である。この方向では、一般相対論的流体中での散乱、非等方散乱、非弾性散乱などへの拡張が可能であると考えられる。もう一つの方向は、新たに得られた光子多重散乱の効果を記述する解析式を一般相対論的光子ボルツマン方程式ソルバーであるARTIST法と組み合わせることで、任意の光学的深さでの一般相対論的輻射輸送計算を実行可能な数値コードを作成する方向である。現時点では、これらの両方向に研究を進めて行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画で購入を予定していたGPU並列計算機を購入したが、予算残が生じたので次年度の研究では物品費及び旅費の一部として使用することを予定している。
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Research Products
(2 results)