2019 Fiscal Year Research-status Report
一般相対論的ART法による超巨大ブラックホール形成と成長過程の研究
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16K05302
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 労太 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (40513453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 雅之 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70183754)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一般相対論 / ブラックホール / ボルツマン方程式 / 光子 / 散乱 / 輻射場 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホール時空における動的な光子輻射場の情報や位相空間における多重散乱光子の情報を正確に解くことは,巨大ブラックホール形成における輻射フィードバックの効果の評価,高エネルギー観測における降着円盤の最内縁の位置の決定,ブラックホール超近傍で形成される宇宙ジェットの根元におけるエネルギー・運動量的収支・バランスの理解など,多様なブラックホール宇宙物理学的現象を理解する際に必要となる.ところが,現在,ブラックホール時空などの湾曲時空中での動的な光子輻射を数値シミュレーションの中で正確に扱う方法は確立していない.本研究の研究代表者と分担者が開発したARTSIT法は,回転ブラックホール中での赤道面における動的な光子輻射場での放射・吸収・散乱の過程を扱う手法として提案された(Takahashi & Umemura, 2017, MNRAS, 464, 4567).現状のARTIST法に基づく数値シミュレーション・コードでは,光子の多重散乱の効果と3次元空間での光子情報をフルに扱うことができない. 今年度は,現状では扱うことができないこれらの効果を取り入れる方向での改良を試みた.まず,光子多重散乱に関してであるが,前年度の導出を試みた4次元平坦時空中における光子多重散乱の確率密度関数の準解析解を拡張することを試みた.光子モンテカルロ・シミュレーションの結果と解析解を比較したところ,解が収束しない領域があり,研究方針の変更があった.方針転換により,結果的には他の方法である漸近解析的な手法を用いることで遂行できたが,想定以上に時間を要した.また,ARTISTコードの3次元化に関しては分担者が所属する機関における一般相対論的数値シミュレーションの専門家との共同研究を進め,オリジナルのARTISTコードを部分的に3次元化した.これらの成果の一部は学会発表などで公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光子多重散乱を記述する解析解を導出する作業およびARTISTコードを空間3次元に拡張する作業において当初予想していなかった検討事項があったため,やや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ARTISTコードに組み込むことが可能な光子多重散乱を記述する解析解を公表する論文の作成作業とARTISTコードを空間3次元に拡張するための作業を進める予定でいる.
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Causes of Carryover |
当初の予定では,GPUを用いた並列計算によるモンテカルロ法により,相対論的流体中の光子多重散乱の効果を明らかにする予定であったが,実際に実行してみると解が収束しない領域があり,研究方針の変更があった.方針転換により,結果的には他の方法で遂行できたが,研究遂行に想定以上に時間を要した.研究代表者のその他の業務の多忙もあった.この2つの理由により,科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認申請書を提出し,承認された.以上が次年度使用額が生じた理由と経緯である.次年度使用額の使用計画であるが,主に,論文執筆環境の整備のための物品購入のために使用する予定である.
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