2019 Fiscal Year Research-status Report
量子化学および分子動力学的手法による星間分子反応素過程の理論的研究
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16K05307
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
田代 基慶 東洋大学, 理工学部, 准教授 (10447914)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理論化学 / 計算化学 / 星間分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
天文・宇宙物理分野で分子や物質の反応が重要な役割を果たす広範な現象に対し、理論化学的手法を適用して問題解明へ貢献することが本研究の目的である。具体的な研究対象は2つあり、1つ目は気相・星間塵表面での複雑な分子生成に関わる化学反応素過程の理論化学的取り扱いである。本計画では特に、複雑な星間有機分子生成に関連する気相・星間塵表面それぞれの反応素過程の詳細を明らかにする。本研究のもう一つの対象は、原子・分子超精密分光を用いた非加速器素粒子物理実験への理論化学的立場からの実験提案・結果の予測・サポートである。これら素粒子関連の研究は、生物のアミノ酸がL体のみから出来ている非対称性、我々の宇宙の物質・反物質の非対称性などを解明する上で重要な役割を果たすと考えられており、原子分子分光実験の計画・解析には理論化学的手法が不可欠である。 今年度は主に非加速器素粒子物理実験と関連した課題を推進した。特に、原子の電子励起状態から光子1つとニュートリノ対が放出されて基底状態に脱励起する過程について検討を進めた。対象としては金原子を候補とし、これまで検討が行われていなかった状態間および遷移要素タイプについて寄与の見積もりを行った。実際の計算では相対論的電子状態計算手法を用いて精度の高い励起状態間遷移要素を求め、ニュートリノ対放出に伴う光子スペクトルの形状およびそのニュートリノパラメータ依存性を調査した。一方で、星間塵表面反応については引き続き表面モデルの妥当性の検討、素反応のエネルギー収支等の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度・次年度で想定通りに計画を進めることができなかった影響で当初の想定よりもやや遅れているが、研究課題は着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで予備的な調査を行ってきた星間塵表面上での化学反応について動力学的な側面に焦点を当てて研究を進める予定である。気相反応に関しては、電子と分子の衝突を扱うことのできる第一原理R行列法について改良を進める。特に、振動・解離効果の取り込みについて引き続き開発・検証を進める計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は研究発表を行った国際学会が近くの埼玉大学で開催されたため、旅費を利用する機会がなかった。次年度使用額については主に研究成果発表用のノートパソコンと旅費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)