2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05311
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀田 昌寛 東北大学, 理学研究科, 助教 (60261541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ブラックホール / 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホールは少なくとも古典的には、質量、電荷、角運動量の3つの量だけでその時空は特徴づけられる。これらの量は「毛」と表現されるが、一方この少なさが、ブラックホールが持つ膨大な量のエントロピーとの間に矛盾があるように思われてきた。質量が大きいほどエントロピーは増加するので、質量無限大極限で、この問題は先鋭化している。一方この極限で、事象の地平面近傍領域の時空曲率は零に近づき、平坦なミンコフスキー時空で記述可能となる。地平面は、平坦時空を一様加速度運動する観測者に対するリンドラー地平面へと写像される。この場合、その総和が無限大量のエントロピーになるミクロな物理状態の存在はこれまで謎とされてきた。[1]の論文では、この問題に対する説得力のある仮説を提示し、その詳細な解析を行った。一般相対論の一般座標変換の一部はリンドラー地平面近傍ではゲージ自由度から物理的自由度を創発することが示された。異なる多数の物理的状態が出現し、ソフトヘアと呼ばれる電荷量で区別することができる。この状態が質量無限大極限でのブラックホールエントロピーの起源になっていると考えることができる。この電荷は地平面を通過する波の情報を重力的に記憶する機能を持つが、純粋な重力波の情報は蓄えられないことも示された。この性質は重要であり、自由度を量子化したときに生じる量子複製不可能定理に関するパラドクスを解決する鍵になっている。
[1] Gravitational memory charges of supertranslation and superrotation on Rindler horizons, Masahiro Hotta, Jose Trevison, and Koji Yamaguchi Phys. Rev. D 94, 083001, Published 3 October 2016
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホール時空の漸近的対称性に関するテーマに関しては重要な進展があり、その結果を既に受理された論文として公開できている。またペイジ曲線に関する解析も進んでおり、間もなく論文を投稿する段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に沿って、堅実に解析を進めていく予定である。またそれに必要な専門的知識、世界での最新の研究進展に関する情報の提供を得るために、多くの世界的な研究者との交流を図り、研究計画推進に役立てる所存である。
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Causes of Carryover |
現在投稿準備中の論文の英文校正料支払いのため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度早々に使用する予定。
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