2019 Fiscal Year Research-status Report
ソリトン理論の非可換化・高次元化と弦理論・可積分系への応用
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16K05318
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
濱中 真志 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 講師 (70377977)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ソリトン / ドメインウォール / ダルブー変換 / Bowダイヤグラム / 高次元ブラックホール / リサージェンス / 非可換幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き, 非可換反自己双対 Yang-Mills 方程式のソリトン解の研究を推し進めた. Dauboux変換を用いることで自明解から多重ソリトン解を厳密に構成した. 特に G = GL(2) だが 「エネルギー密度」が実数となるようなソリトン解を具体的に構成した. 1ソリトン解のエネルギー密度は可換空間のものと一致し, 4次元空間内の3次元超平面上にエネルギー局在したドメインウォールであることが示された. さらに多重ソリトンの漸近的振る舞いを考察した. これと平行して可換空間上の G = GL(2) の場合の 1 ソリトン解を大学院生の黄山齊 (Shan-Chi Huang) 氏と一緒に詳しく調べた. 3種の計量 (Euclidean, Minkowski, Ultrahyperbolic) で作用密度が実数となる厳密解を構成した. この解は一般にドメイ ンウォール解と周期解の複合体となるが条件をうまく課すと 、周期性も特異性もない純粋な1 ドメインウォール解となる. ゲージ群をユニタリにできれば現実の素粒子論・宇宙論への応用の可能性が広がるが, 今のところ実現可能なのは Ultrahyperbolic 計量の場合のみである.
高次元ゲージ理論の特殊な非可換ソリトン解について得られた結果と非可換空間における特異点の除去法について一部の成果を公表した. 高次元のブラックホール解や Bowダイアグラム, 変形量子化の リサージェンス構造について理解を深めた. 一連の成果に関して国内外の研究会・セミナーで積極的に発表し, 幅広い分野の専門家と質疑応答を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末の2019年3月に引き続き, 2019年6月にも数週間イギリス周辺を巡ることとなった. 2017年6月に他界した共同研究者 Jon Nimmo 氏を偲ぶ研究会に呼ばれていたのだが, さらにアぜルバイジャンの研究会に招待されたため, Oxford, Edinburghへの滞在を合間に加えて 3 週間弱の出張を行った. これら一連のイギリス滞在は大変有意義であった. 共同研究もこれで大枠が決まり年度末に共著論文として投稿を果たした. Oxford 大学では Lionel Mason 氏・ Jason Lotey 氏と高次元ゲージ理論・高次元ブラックホールについて貴重な議論ができた. Edinburgh 大学では Jose Figueroa-O’Farrill 氏の計らいでセミナーをさせていただき交流を深めた.
非可換ソリトン散乱の議論には可換空間でのソリトンの結果が必要となる. そのため帰国後に大学院生の黄山齊 (Shan-Chi Huang) 氏と議論していくことになったが, 非自明な可換1ソリトン解の構成は自明でな く, 夏頃からほぼ毎週頭を悩ませていた. 秋頃に学生さんが突破口を見出しさらにうまいアイデアを用いて冬頃 には全貌が明らかになってきた. そのあとも紆余曲折しながら議論を続けているうち結果がどんどん膨らんできたため独立に論文をまとめることとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
新しく発見した反自己双対ヤン・ミルズ方程式のドメインウォール解は大変興味深く, 予想外の展開を見せながら良い方向に向かっている. 来年度はこれらの物理的解釈や応用を展開する予定である. 特にダークマターの起源や場の量子論の新しい摂動論的寄与に関して新しい知見が得られるのではないかと期待している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行を受けて、2020年3月に参加を予定していた、研究集会ENCOUNTER with MATHEMATICS「第75回Cluster Algebras」(中央大学理工学部)や、国際研究集会「Eguchi Memorial Symposium」(Kavli IPMU)、研究集会「高次元ブラックホール時空の対称性の解明とその応用」(大阪市立大学)、国際研究集会「Randomness, integrability and representation theory in quantum field theory」(大阪市立大学)などが軒並み開催中止となったため、科研費に残高が発生することとなった。
これらの研究集会で行う予定だった研究打合せや専門的知識の吸収は、ZOOMなどのインターネットプラットフォームを用いた手段で2020年度内に実施していく予定である。そのために有料版ZOOMの契約費(月額2000円)、アイパッドやパソコンのソフトウェアの購入、セミナー講師への講演謝金が必要となる。これらに残高を充てる予定である。
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Research Products
(6 results)