2017 Fiscal Year Research-status Report
ミューオン精密物理で切り拓く次世代素粒子標準模型への道
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16K05323
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
野村 大輔 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (40583555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミューオン / 異常磁気能率 / 素粒子の標準模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も昨年度に引き続き、ミューオンの異常磁気能率 (muon g-2) について着実に成果を挙げることができた。 muon g-2 は素粒子の標準模型を超える新しい物理を探るのに有用な物理量として知られている。この物理量から新しい物理の存在を証明するためには muon g-2 の実験値と標準模型からの予言値(理論値)との比較が重要であるが、後者の値を精密に計算する上で最も鍵になるのがハドロンからの寄与である。ハドロンからの寄与のうち不定性の最も大きなものは hadronic leading-order (LO) 項と呼ばれる。我々のグループは、以前(2011年)、hadronic LO 項を精密に評価した値を論文として発表した。この論文の結果によると、muon g-2 の実験値と理論値との間には3標準偏差以上のずれがある。これは標準模型を超える新しい物理の存在を示唆するものと解釈でき、非常に高い引用数を得た。 一方で、この論文でインプットとして用いた実験データは現在ではすでに古く、最新のデータを用いて解析をやり直すとともに、解析のあらゆる部分を見直して理論値をさらに精密に計算する必要がある。 今年度は新しいデータを解析に加えたり、輻射補正に由来する不定性の評価方法を見直したり、データの組み合わせ方を工夫したりするなど、解析の様々な部分に改良を施した論文を完成させ、プレプリントサーバー arXiv.org に投稿した(arXiv:1802.02995)。この論文によると、muon g-2 の実験値と理論値との間には 3.7 標準偏差にあたる不一致が存在する。この結果により、標準模型を超える物理が存在する可能性は一層大きくなったと言える。 なお、この論文は細部を微修正した後に 2018 年4月に Physical Review D 誌に投稿され、同月中に同誌への掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究課題の最も重要な研究である muon g-2 に対する leading-order hadronic 項の再評価に関する論文を実際に完成させ、プレプリントサーバーに投稿することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた結果をもとに、副産物として得られる様々な物理量を計算する。また muon g-2 に影響を及ぼすと期待される新しい物理の可能性を探るとともに、新しい物理の寄与が現れると期待される同様な過程を調べてゆく。
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