2022 Fiscal Year Annual Research Report
High-precision calculation of the electron anomalous magnetic moment based on the quantum electrodynamics
Project/Area Number |
16K05338
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仁尾 真紀子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 上級研究員 (80283927)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 量子電磁気学 / 電子 / ミュオン / 異常磁気能率 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年4月にフェルミ国立研究所からミュオンの異常磁気能率(g-2)の新測定値が発表された。ミュオンg-2での理論と実験の差異は新実験をもってしても解消されず4標準偏差で残ることとなった。また、電子g-2でも2022年9月にノースウエスタン大より14年ぶりの新測定結果が発表された。これらの新実験結果に触発され、本研究課題では、量子電磁気学(QED)のレプトンg-2への高次補正項の寄与、特にこれまで全く計算されていない摂動12次の項を求める方法についての研究を新たに開始した。 ミュオンg-2についてはこれまでの結果から、比較的少数のファインマン図のクラスが主要項を与えることが知られている。さらに摂動12次で初めて出現するタイプのファインマン図にも大きな寄与が生じる可能性が否定できない。これらのファインマン図からの寄与を、数値計算により求めた。ファインマン図に対応する積分の中には90万行にも及ぶ巨大なものもあるが、現状の計算機環境で信頼性の高い数値計算結果が得られることが判明した。 電子g-2への寄与、特に、光子6個のみによる量子補正効果の寄与の計算は、従来の方法では計算量においても計算の信頼性においても大きな困難に直面することは間違いない。そこでファインマン図に依らない数値的摂動計算方法についての検討を開始した。 本研究課題のサポートにより、COVID19で対面交流が困難になる前に、国内外の実験及び理論の研究者とレプトンg-2に関する議論を行った。以後、その議論を基にレプトンg-2のQED理論値の精密化を行った。研究開始当初は、数値積分方法の改善による精度向上を目指していた。途中、他グループから異なる方法での数値計算結果が発表され、それを利用し、さらに緻密な検証方法を立案、実証した。これらの研究結果を踏まえ、さらなる精度を目指す上での次の課題が明確になった。
|