2017 Fiscal Year Research-status Report
単極、双極遷移をプローブとするクラスター共鳴の探査と炭素燃焼過程への応用
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16K05339
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 真明 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50402813)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は反対称化分子動力学を用いて、28Siのクラスター構造とその単極/双極遷移強度を求めた。その結果、α+24Mgクラスター状態と12C+16Oクラスター状態のエネルギーと遷移強度を示し、クラスター状態が非常に強い遷移強度を持つことを予言した。28Si低励起エネルギー領域に現れる単極/双極強度を理論的に説明したのは、本研究がはじめてであり、重要な成果であると言える。また、反対称化分子動力学の波動関数からクラスター崩壊の寿命を求めるあたらしい理論手法を開発した。ラプラス展開法と名付けられたこのあたらしい方法は、1粒子波動関数の反対称化積をラプラス展開することで、余分な近似なしに崩壊幅振幅を求める。特に、従来の方法とは異なり、変形したクラスターや、複雑な構造を持つクラスターの崩壊寿命をも精度良く求めることができるのが重要な特徴である。この方法を用いて、28SIおよび13Cのクラスター構造の崩壊寿命を理論的に求めた。以上の結果は3編の誌上論文として、発表した。また、クラスター構造に関する議論を、中性子過剰核のピグミー共鳴に応用することで、Ne同位体のピグミー共鳴の崩壊モードの研究をおこなった。その結果、26Neのピグミー共鳴がコア励起した状態へ崩壊するメカニズムを説明した。また、同様の効果が他のNe同位体でも予想され、特にドリップライン近傍の動遺体では、E1,IS1強度ともに非常に強くなり、さらにコア励起が顕著になることを予言した。これらの結果も1編の誌上論文として発表し、さらに一編を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、24Mgおよび28Siのクラスター状態のエネルギーと崩壊寿命を求めることに成功しており、順調に研究が進展していると言える。特に、ラプラス展開法の開発によって、崩壊寿命の計算精度が向上したことは、大きな成果と言える。また、当初の計画にはなかったが、クラスター構造の議論をピグミー共鳴に応用することで、その崩壊モードに関して新たな知見を得ており、研究の方向性が広がった。その結果、非常に発展性のある課題になったと言える。今後は、中性子過剰核のE1応答も視野に入れつつ研究を展開していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、当初計画通りに核反能率の評価を行う予定である。すでに得られている28Siおよび24Mgの遷移密度分布を求めることで、α非弾性散乱断面積やα捕獲反応の断面積を求める。すでに、遷移密度を求める計算プログラムは完成しており、得られた遷移密度を反応計算プログラムのインプットとして用いることで断面積と反能率の評価を行う。また、ピグミー共鳴の研究をさらに発展させる予定である。具体的には、理化学研究所で測定された酸素同位体のE1およびIS1強度分布を理論的に求め、測定値と比較することで、ピグミー共鳴の構造を明らかにする。以上の成果を国際会議での口頭発表および誌上論文として公表する。
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Causes of Carryover |
予定していた国際研究会出席のための旅費を、他の外部資金によって支弁したため。
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