2017 Fiscal Year Research-status Report
原子核構造の精密計算と時間反転対称性の破れによる電気双極子モーメント
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16K05341
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
吉永 尚孝 埼玉大学, 理学部, 教授 (00192427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東山 幸司 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (60433679)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気双極子モーメント / 殻模型 / シッフモーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では重い領域の原子核に対して殻模型計算および核子対殻模型計算を行い、原子核の励起メカニズムを解明すると共に、得られた原子核波動関数を用いてシッフモーメント及び電気双極子モーメント(EDM)を系統的に評価する。 本研究の成果は,EDMの観測実験が盛んにおこなわれている水銀199原子核のシッフモーメントを計算し,原子のEDMを評価したことである。パリティと時間反転対称性(PT)を破る相互作用により生じる,重い原子核に対するシッフモーメントの理論研究は,これまで平均場模型による計算しか行われていなかったが,本研究により初めて平均場を超えた枠組みによる数値解析に成功した。本研究の結果により,PTを破る相互作用により生じるシッフモーメントは特定のエネルギーレベルの寄与が重要であることが明らかになった。 また本研究では,質量数210領域,質量数220領域の偶偶核・奇核・奇奇核について殻模型による数値解析を実行し,原子核の励起メカニズムを明らかにした。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まで行われてこなかったため,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現するように決定した。エネルギー準位の実験値との比較によりコア励起に起因する八重極励起状態が低エネルギー領域に出現することが分かった。 その他の成果として、82Seと76Geについてニュートリノの出ないダブルベータ崩壊の崩壊率を殻模型により計算した。他の研究グループの計算値と比べて、核行列要素は小さくなることがわかった。また核行列要素は対相関による基底状態の波動関数の構造に強く依存することがわかった。この結果は論文にして出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では平成29年度において,シッフモーメント及びEDMの理論的枠組みを整備すると共に,殻模型と核子対殻模型の二つの計算プログラムの拡張を行うことを計画していた。計算コードを32ビットから64ビットに拡張し,それを用いて質量数200領域の原子核構造の数値解析を行った。また,この領域の水銀199原子核に対してPTを破る相互作用により生じるシッフモーメントの概略的な計算を行うことができた。本研究成果は日本物理学会において発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
質量数220領域(225Ra周辺)の原子核構造の数値解析を行う。この領域では殻模型の配位数が多大となり、殻模型の適用が困難になる。そこで、昨年度整備された生成座標法の枠組みを重い原子核に適用できるよう拡張して、数値解析を実行する。
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Causes of Carryover |
本研究では、数値計算を行うためワークステーションが不可欠であるが、平成29年度の数値計算を実行するためには、それほど高額のワークステーションを購入する必要がなかった。ある程度安いワークステーションを購入し、残りを次年度に繰り越すことになった。
平成30年度では、より大規模計算を実行するため、最新型のワークステーションを購入する予定である。
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Research Products
(12 results)