2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K05343
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 宏次 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有限温度密度QCD / 高エネルギー原子核衝突 / 符号問題 / 非平衡場の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
【符号問題】符号問題のある模型として、複素ランジュバン方程式を用いる解析をフェルミオン模型に対して継続した。論文に一度まとめたが、解析に不十分なところがあり、数値解析を継続していいるところである。また、符号問題に関連する重要な課題として、格子上の実時間シミュレーションを目指した基礎研究を菊川氏と大学院生と共同で開始し、まず、格子QCDに対する実時間形式の有限温度経路積分の表式を書き下した。さらに、自由場の場合には、得られた格子作用が物理的に妥当な振舞いをすることを確認した。実時間シミュレーションが可能になれば、この形式を用いて輸送係数の評価に貢献するものと考えられる。2018年8月には、符号問題に対する力学変数複素化の手法について、大学院生向けの夏の学校で講義を行った。
【QGPのハドロン化に伴う光子生成機構の評価】高エネルギー重イオン衝突において、光子生成は、強い相互作用を行わないために、衝突初期の情報を担う観測量として注目されてきた。しかしながら、近年では、QGP相およびハドロン相からの光子生成の総合的な理解が、有意な情報を引き出すために不可欠であるという認識がある。われわれは、QGPのハドロン化過程における光子生成という、これまで見落とされていた過程に注目して、光子生成への寄与を研究している。ハドロン化過程に伴う光子の分布・収量とこれまでの観測結果との比較を行い、物理学会において発表した。現在、論文投稿にむけて準備中である。
【高エネルギーハドロン反応】高エネルギーハドロン反応で重要になる、いわゆるsmall-xハドロン構造の研究について、宇宙線に関する国際会議(名古屋大学)、および日米物理学会原子核部門合同学会において、招待講演を行い、分野の現状を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
符号問題のある作用に対して、変数複素化の方法の数値シミュレーションをQCDに対して行う計画であった。しかし、複素ランジュバン方程式を簡単なフェルミオン模型に適用するという準備研究の段階で、かねてよりの相転移領域における手法の問題に対して、複素化した上での平均再重み付けの方法の解析に時間が予想以上に検討時間を要したため。準備研究の結果をまとめなおして、公表できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、有限化学ポテンシャルの導入に伴う、熱平衡系の統計平均に現れる符号問題を中心に研究を行ってきた。現在では、同時に、符号問題を伴う実時間シミュレーションへの応用可能性の研究が、プロジェクトの重大種目の一つになってきた。意欲的に、並行して取組みたい。
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Causes of Carryover |
GPUを搭載した計算用ワークステーションを導入する予定であったが、研究進捗状況によって、導入を見送った。しかし、昨年度末に、稼働中のワークステーション一台が故障停止したので、現在早急に新規ワークステーション導入を進めている。
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