2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05345
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
原田 正康 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40311716)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パリティ2重項模型 / 核物質 / スピン軌道相互作用 / D中間子 / スカラー中間子 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 2フレーバーパリティ2重項模型を用いた解析: (1-1)文献[1]の模型を用いて原子核のスピン軌道相互作用を解析し、実験値が再現されることを確認した。(1-2)デルタ粒子も含めた模型を構成し、高密度状態でのデルタ物質の存在可能性を示した。(論文準備中)(1-3) 文献[1]の模型に含まれる中間子のスペクトル解析の準備を進めた。(1-4)文献[1]の模型を2 種類のパリティ2 重項を含むように拡張し、質量・崩壊幅の解析を進めた。 文献[1] Y. Motohiro, Y. Kim, M. Harada, Physical Review C92, 025201 (2015) (2) 3フレーバーパリティ2重項構造を持つ模型の構築: (2-1)ハイペロンを含む模型を構成し、質量・崩壊幅・軸性電荷の実験値を再現するパラメータセットがあることを見いだした。(2-2) 核物質中でのベクトル型中間子の解析: ω・φ中間子を含む模型の構成、及び、スペクトル関数解析の準備を進めた。 (3) 核物質中でのチャームクォークを含むハドロンの性質変化の解析: (3-1) D中間子とスカラーD中間子をカイラルパートナーとして含む有効模型を用い、平均場近似での質量の密度依存性を解析した。パートナー間の質量差等のカイラル対称性回復に伴う変化を明らかにした。(論文投稿中)(3-2)スカラーD中間子スペクトル関数を解析し、カイラル対称性の回復に伴うスペクトル関数の変化を明らかにした。(論文投稿中)(3-3) Σcバリオンと負パリティΛcバリオンをカイラルパートナーとして含む模型を構成し、質量・崩壊幅の解析を実施した。 (4) 2種類のスカラー中間子を含む有効模型の整備: 2クォーク型と4クォーク型の両方を含む有効模型の構築に向け、スカラー中間子の質量・崩壊幅の解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画の「(1)2フレーバー・パリティ2重項模型を用いた解析」では、(1-1)のスピン軌道相互作用の解析は実施中である。(1-2)の超流動状態の解析は実施しなかった。その代わり、高密度核物質でより重要となると期待されるデルタ物質の解析を実施し論文執筆中である。29年度以降の計画でも超流動に関する部分は、デルタ物質に置き換えて進める予定である。(1-3)の中間子質量の解析に関しては、下記の(2)へ含めてその準備を進めた。これら3課題に加えて、計画にはなかった2種類のパリティパートナーを含む模型の解析を進めている。 「(2)3フレーバー・パリティ2重項構造を持つ模型の構築」に関しては、おおむね順調に進んだ。28年度はこの課題に加えて、ベクトル中間子のスペクトル解析の準備を進めた。 「(3)核物質中でのチャームクォークを含むハドロンの性質変化の解析」では、ほぼ予定通りにD中間子スペクトル関数の解析を実施し、論文にまとめ査読付き学術雑誌に投稿中である。さらに、この解析の前段階での平均場近似での解析において予期しなかった新しい発見があったため、独立な論文にまとめ、査読付き学術雑誌に投稿中である。 「(4)2種類のスカラーを含む有効模型の整備」では、やや遅れ気味であるが、解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、交付申請書に記載した実施計画に従って進めるが、28年度の研究を受けて変更を加える部分がある。以下では、交付申請書の番号に従って変更点のみまとめる。 (5) 2フレーバー・パリティ2重項模型を用いた解析:超流動状態の解析に代えて、(5-1) 28年度に実施した高密度核物質でより重要となると期待されるデルタ物質の解析を継続すると共に、(5-2)非一様カイラル凝縮相の解析を開始する予定である。29年度は、第1段階として、研究実績の概要であげた文献[1]の模型を用いて非一様カイラル凝縮相の存在可能性を解析する。(5-3) 核物質中でのハドロンのスペクトル解析は、下記(6)に含め、より広い見地から実施する予定である。 (6) 3フレーバー・パリティ2重項構造を持つ模型の整備: ω中間子・φ中間子の核物質中でのスペクトル関数の解析に重点をおいて進める予定である。 (7) チャームクォークを含むハドロンの解析: 高密度核物質中のD中間子の解析に代えて、チャームクォークを含むΛc及びΣcバリオンに対してカイラル対称性の基づく有効模型を構成し、これらの高密度核物質中のスペクトル解析を開始する。29年度は、真空での質量・崩壊幅の解析を実施すると共に、Λcバリオンと核子間のポテンシャルを結合チャネル効果を取り入れて解析する予定である。 (8) 2種類のスカラーを含む有効模型の整備: 申請書の予定通り、真空における質量・崩壊幅の性質を再現する模型構成を進める。 30年度以降の計画に関しては、上記の変更を考慮し、適宜修正して進める。
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