2016 Fiscal Year Research-status Report
強磁場によるカイラル時空結晶生成とその動的性質の解明
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16K05346
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
阿武木 啓朗 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (70378933)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クォーク物質 / 高密度 / 強磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、 強い相互作用の基礎理論である量子色力学 (QCD)が極限的外部環境下において、量子多体状態「カイラル(時空)結晶状態」を実現する可能性を追求するものである。カイラル結晶状態とは, カイラル対称性が実空間や運動量空間において、規則的空間パターンを保ちながらも、部分的に回復した相の総称である。このような相では、物質が自発的に結晶構造をもつことで、弾性体としての物性が生じ、ひずみ応力特性、振動に対する応答、音波等に特異性が現れると考えられる。そのような特異な物性を解明することで、強磁場をもつマグネターの内部で実現しているか否かについてアプローチしていく。 本年度(平成28年度)は年次計画にしたがい、カイラル臨界点近傍においてGinzburg-Landau理論を展開し、磁場の効果を平均場近似の枠内で研究した。その結果、クォークの質量に対して磁場が大きくなると、実キンクカイラル結晶に比べ、複素カイラルスパイラルが安定化し、磁場が極端に大きくなると臨界点の構造さえも変えてしまうことが分かった。空間3次元では、特定の方向の運動量をもつスパイラル型の凝縮はおこりにくいことが分かっている。磁場が存在することで、強い相互作用により運動量との間でロッキングが起こり、磁場に誘起された形でカイラルスパイラル状態が自然に発現することを突き止めた。これらの結果は、京都大学で開催されたQuarks and Compact Star 2017において発表しており、現在、本論文にまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は大学における業務が重なり、やや遅れ気味とみることもできるが想定の範囲内である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を本論文にまとめ、それと平行して次年度の計画を遂行していく。具体的には臨界点近傍での記述しかできないGinzburg-Landau作用による扱いを超え、クォークを陽に含むNJL模型を用いて相構造の解析を行う。これを行うために、まず周期ポテンシャル中のBogoliubov-de Gennej方程式を数値的に解きそのバンド構造を求め、セルフコンシステントにポテンシャルを決定する必要がある。離散変数表現(DVR)法等の洗練された数値的手法が必要である。着実に計画にそって遂行する予定だが、想定外の困難に遭遇することも当然予想される。
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Causes of Carryover |
H28年度の予算執行計画と実際の決算に齟齬が生じた主な理由としては、2月に京都での会議に招待されたこと、連携研究者を招待する予定であったが都合の折り合いがつかず、これを次年度に延期したことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に計画していた連携研究者の招待を早めに行い、可能な限り計画通りに予算執行を行う予定である。
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