2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05357
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
橘 基 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30404122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中性子星 / 暗黒物質 / 中性子星物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、研究題目「中性子星から探る暗黒物質の物理」に基づく研究計画として掲げた内容のうち、以下の1点と、それとは新たにもう1点の成果を挙げることができたので、ここに報告します。
1つは、中性子星における暗黒物質捕獲の熱化(Thermalization)に関する研究の応用である、これは科研費未採択であった27年度に挙げた成果で、今回はこの成果を中性子星の冷却現象(Cooling process of neutron star)に適用した。具体的には中性子星の冷却を記述する方程式(Cooling equation)に、標準的な冷却課程(ニュートリノ課程、光子課程)に加え、暗黒物質捕獲による課程を考慮して解析を行った。これは中性子星の観測可能量との比較が可能である点で非常に興味深い結果であると考えられる。
もう1つは、中性子星を構成する超高密度クォーク・ハドロン物質の性質を理論的に解明する際に重要となる「有限化学ポテンシャルの場の理論」に関する研究である。ここにおいてしばしば「符号問題(sign problem)」とよばれる問題が現れるが、今回の研究ではそれをレフシェッツ・シンブル(Lefschetz thimble)の手法を用いて解析した。その結果、この手法をゲージ理論へと拡張した初めての研究成果が得られた。これは将来的に、暗黒物質と中性子星の物理を考察する際、重要な情報を与えてくれると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果として上記のように2つの成果を挙げたが、実をいうと28年度は個人的に大きな病気をして仕事を休むことを余儀なくされたため、当初予定していたようにはいかなかった。正直に言えば上記の成果も、共同研究者に依るところが大きい。
ただ幸い復帰することができた以上、来年度以降の研究課題については、無理のない範囲で取り組んで行く所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の病気療養が秋初めまで続いたが、その後は研究会への参加や出張により共同研究を再開することができた。11月の京都での国際会議の際に、佐賀に外国人と招聘し、それにより新たな研究課題のもとで共同研究がスタートした。また3月の国内出張で、関連する研究課題の共同研究も始まった。これらはひとえに科研費によるサポートのおかげであり、大変ありがたく思っている。今後何とか成果を出したい。
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Causes of Carryover |
28年度春に起きた病気やその療養のため、研究活動は主として秋以降に行われたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の成果に対応して、29年度はすでに海外への国際会議の予定が入っている。加えて新たな共同研究も開始したため、それに関連した研究者招聘や、可能であれば研究会の開催(関連分野の研究者と共同で行うことも視野に入れて)も予定している。
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