2016 Fiscal Year Research-status Report
超強磁場中でのニュートリノ・光子の放出とマグネターの磁場構造の研究
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16K05360
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
丸山 智幸 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50318391)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強磁場 / 粒子生成 / 相対論的量子論アプローチ / 中性子星 / 冷却過程 / ニュートリノ / アクシオン |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁場中での陽子や電子等のシンクロトロン放出による粒子生成の研究を行った。そこで以下のような成果を得ることが出来た。 1.従来、理論計算が不可能であったTeVエネルギー領域でのπ中間子生成の計算方法を世界で初めて確立。これも従来では計算できなかった、生成粒子の反応後の運動量分布を求めることに成功した。ここで開発された方法は、π中間子に限るものではなく、シンクロトロン放出によって生成されるあらゆる粒子に応用できるものである。 2.上記の方法を、強磁場中でのアクシオン生成に応用。これまで近似として用いられていた低温展開が、強磁場では適応できないことを示すとともに、近似無しの計算を行うことで、生成アクシオンの放出強度が、従来考えられていたものよりもかなり大きいことを示した。 3.同じ方法をニュートリノ反ニュートリノ対生成に応用し、これまで考えられていたのと異なる、強磁場中性子星からの新しい冷却過程の研究を行った。これまで中性子星の冷却過程として主に考えられていたのは、中性子がベータ崩壊を行って反ニュートリノを放出する直Direct Urca、中性子ともう一つの粒子とが関わるとModified Urcaであり、その放出エネルギーは温度に対して、前者が6乗、後者が8乗に比例するものであった。これに対して、強磁場中での陽子や電子からのニュートリノ反ニュートリノ対生成では、温度のべきが2程度と非常に小さいもので、従来よりも大きな効果を示すものと考えられる。 以上の結果は、強磁場中でのシンクロトロン運動に伴う粒子生成の効果が非常に大きいものであり、中性子星の冷却過程の再考の必要性を示すとともに、γ線生成等およびその吸収による再加熱過程にも大きな示唆を与えるものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニュートリノ反ニュートリノ対生成の基本的プログラムの作成には成功した。ただ、冷却過程の研究に進むためには、五重積分を実行する必要があり数値的に大きな困難を伴っている。 また、現実の中性子星の温度は1keV以下であり、強磁場によって生じるランダウ準位のエネルギー間隔よりもかなり小さく、低温展開を行うことが不可能で、量子的計算を近似無しで行う必要がある。このような計算は現在まで、世界の他のグループまで含め、ほとんど試みられたことがない。これまでに、このための数値計算法を考案したので現在試みているところである。 ニュートリノ反ニュートリノ対生成では終状態が二粒子であるため大きな困難が生じた。そこで、終状態が一粒子であるアクシオン生成の計算に切り替え実行した。この研究により温度依存性、量子的計算の重要性を示すことが出来るとともに、この研究を通して計算方法の確立と温度依存性についての多くの示唆を得ることができた。そして、この経験からニュートリノ反ニュートリノ対生成への応用へ道筋を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ニュートリノ反ニュートリノ対の計算で、できるだけ解析的に積分を実行し、数値積分の次元を可能な限り小さくすることで、計算そのものを終了させる。アクシオン生成と並んで、強磁場を伴う中性子星の新たな冷却過程と考えられるので、ニュートリノ反ニュートリノ対生成とそれらの放出による冷却率を求める。これまでの結果から、強磁場中での量子論的に求めた粒子の放出率は、半古典近似や摂動計算の結果よりも非常に大きいことが分かった。 ここでの成果を元に、中性子が陽子と電子に直接ベータ崩壊を起こすことで、反ニュートリノを生成する、直接過程の研究へ進める。直接過程は、エネルギー・運動量保存則より起こる密度に制限がかかっていたが、強磁場中ではその制限が存在しないため、大きな冷却が期待できる。 さらに、ニュートリノ以外の光子等の粒子生成に応用し、磁場エネルギーを熱エネルギーに変換する新たな過程の研究へ進んで行く計画である。
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Causes of Carryover |
数値計算用のサーバーを購入予定であったが、昨年度は研究結果の発表機会が多くそのための旅費に多く消費せざる終えなかった。また、大きな数値計算に至るまで研究が進んでおらず、現在使用中の機械でプログラム製作およびテスト計算が可能であったので、購入は次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と平成29年度の予算を合わせて、物品費として数値計算用のサーバー購入する。
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Research Products
(18 results)