2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K05382
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森 正樹 立命館大学, 理工学部, 教授 (80210136)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 天体ガンマ線 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際宇宙ステーションの「きぼう」曝露部に設置された宇宙線観測装置CALETのデータを解析し、天体ガンマ線を荷電粒子事象から選別し、そのエネルギーや方向を再構成して、銀河中心方向などからの暗黒物質の信号、特に重い(数百GeV~数TeV)未知粒子(Weakly Interacting Massive Particles, WIMPs)の対消滅から生じる特徴的な信号を探索し、暗黒物質の正体の解明を目指している。分厚いカロリメータを有するCALETは、高エネルギーガンマ線に対し高いエネルギー分解能を有する点を活用することができる。 本年度は、早稲田大学やルイジアナ州立大学の共同研究者とともに、CALETカロリメータの観測データを用いたガンマ線の解析方法を確立し、フライトデータから銀河系拡散ガンマ線やCrab, Vela, Gemingaなどの天体を解析し、フェルミ衛星で得られていた結果と矛盾のない結果を得た。この結果をまとめた論文と、LIGO/VIRGOで報告された重力波イベントに対し、ガンマ線対応天体を探索して上限値を求めた論文を学術誌で発表した。後者の結果については国際会議COSPARや日本物理学会などでも講演を行った。また、これらの成果を基に、蓄積している統計量の向上を待ちながら、暗黒物質信号の探索の解析準備を進めている。 また、CALETの主目的である宇宙線電子(ここでは陽電子も含む)は、荷電を持つ以外ガンマ線と同様の電磁相互作用による粒子シャワーとして観測されるため、解析方法には共通点が多い。宇宙線電子の4.8 TeVまでのエネルギースペクトルを延長して求めた論文に貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は実際のCALET観測データの解析方法を確立し、シミュレーションとの比較を行って方法を検証し、第二年度は宇宙線事象からガンマ線イベントを識別することに成功した。第三年度はシミュレーションと観測データとの詳細な比較が可能となり、共同研究者とともに二つの論文を学術誌に投稿することができた。本年度(第四年度)はこれらの結果を改良して国際会議等で発表し、これまでの成果を基に暗黒物質信号の探索の解析準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
CALETの観測データが暗黒物質信号を含んでいる可能性について、これまでの成果を基に、蓄積している統計量の向上を待ちながら、慎重に解析を進めていく。特に重いWIMPs信号の探索には、高エネルギー領域におけるガンマ線の荷電宇宙線からの識別効率を高めるための解析方法の一層の改善が必要である。
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Causes of Carryover |
研究成果発表のための国内旅費が、日本物理学会大会への出張1件が他の予算により手当てできたため当初予定より少なくなり、また論文投稿料が1件となったため当初予定より少なくなった。次年度は他予算が終了したため、学会における研究成果発表のための旅費や論文投稿料など、本科研費予算からの支出が増えると見込まれるので、繰越額と予定額を合わせた金額が必要となる。
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