2018 Fiscal Year Research-status Report
超高電圧デバイス実現のための超高真空真空ギャップ絶縁の基礎研究
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16K05385
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山本 将博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (00377962)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高電圧 / 真空絶縁 / 電子銃 / 極高真空 / 電子刺激脱離 / 真空放電 |
Outline of Annual Research Achievements |
高電圧の真空絶縁試験において実用例としてcompact-ERL(cERL)に設置されている500kV電子銃の運転で得られるデータは有用なものとなっている。 2018年度では約2カ月間のcERL運転を行い、この間、電子銃は約370時間無放電で500kV状態を維持し安定なビーム供給を行った。この実績は、2016年に発表した論文"High voltage threshold for stable operation in a dc electron gun"の結果を裏付けるものであり、高電圧コンディショニングにおいて観測される最低の放電停止電圧以下の条件として電子銃の運転電圧を設定することによって、長期間無放電で運転が可能であることを実例として示している。また、放電無く安定に電子銃を運転している期間においても、放電に至らない微小な暗電流によってゆっくりとコンディショニングが進行していると推測される結果も今回の分析で初めて明らかとなり、この現象もまた上記論文で述べている電子刺激脱離により発生するイオンが放電に寄与するモデルとも合致している。 この結果は加速器用電子源のみならず高電圧かつ高真空状態の電極間ギャップの放電に関わる機器に対して、実装置で安定に電圧を維持できる電圧をコンディショニング時の放電停止電圧から明確に知ることができることから非常に有用であると考えられる。 このことからも本研究課題の一つである電子刺激によるイオン発生の効率の評価を様々な電極サンプルに対して実施できる基礎実験装置の開発は重要であることが再認識できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規プロジェクトの装置開発に加わることとなり加速器の試験運転日までに装置の設置を完了できなければプロジェクト全体の停止に影響するためこの任務を最優先にせざるを得ない状況となり、本研究課題遂行の時間が十分取れない状況となったため、真空放電の基礎実験用の装置の立上げが遅れた状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の新規プロジェクトの装置開発が無事進み一段落したことから、遅れていた真空放電の基礎実験用の装置の立上げを進める。第一に、一昨年度に行ったイオン軌道シミュレーション結果に基づき、電子ビーム刺激により脱離するイオンに関する生成効率評価のための電極および検出器のステージの詳細設計を行い、それらの製造を進める。第二に、それらを真空装置内へ設置し真空試験を行う。第三に電子ビームをサンプルに照射し、発生するイオンの信号をとらえることを今年度計画している。
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Causes of Carryover |
当該年度は年度初期より業務多忙となったため、当該年度に計画していた実験装置立上げに関わる費用の多くを補助事業期間延長申請により繰越しとしたため。 これらの予算は実験装置(主に電極および検出器のステージ)の製造、真空実験で使用する消耗品、電極サンプルの作製などでの使用を計画している。
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