2018 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化によって発現する90°ストライプドメインの巨大誘電応答の研究
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16K05395
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
並河 一道 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (10090515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和田 謙二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員(定常) (60343935)
石野 雅彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主幹研究員(定常) (80360410)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リラクサー強誘電体 / 分極ドメイン / ドメイン壁 / 相転移 / スペックル |
Outline of Annual Research Achievements |
軟X線レーザーを用いたスペックルで観察された、PMN-27.8%PTのミクロドメインの形成と成長過程におけるドメイン境界の分極のゆらぎを、生成―消滅方式の強度相関法によって調べる試みは、残念なことに、軟X線レーザーの不調のためまだ十分なデータが得られていない。 しかしながら、PMN-30%PTでは、X線CTR散乱によって、昇温過程で強誘電―常誘電相転移境界に向かいドメイン壁の厚みが増大し境界があいまいになり相転移にともないドメイン壁が消失する現象が確認された。これは軟X線レーザーで観察した90度斜めストライプドメインの自己相関関数の境界が温度降下にしたがい明瞭になっていく現象に対応するものである。また、He-Neレーザーで観察したマクロドメインの自己相関関数が温度降下とともに振幅の切れ込みが深くなっていく現象にも対応している。 熱平衡を保ちながらドメインを形成した場合スペックルで観察した自己相関関数のショットバイショットのゆらぎは小さく、ドメイン境界の分極は全体として共通モードでゆらいでいることが想定された。PMN-27.8%PTの熱平衡降温過程に現れる自己組織化による斜め90度ストライプドメインの発展は、共通モードでゆらいでいるドメイン境界が形成され、温度降下にともないドメイン壁の境界が明瞭になってドメイン幅が狭くなっていくことによって成立しているものと考えられる。 一方、PZN-9%PTでは、He-Neレーザーで観察されたマクロドメインはその幅が温度上昇に比例して減少しドメイン境界が鮮明になるが、相転移温度で突然ゆらぎが激しくなり消失することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
誘電率のスパイクが現れる組成相境界直下のPMN-27.8%PTで観察された斜め90度ストライプドメインの成長とドメイン壁の分極のゆらぎの温度変化との関係を調べるため関西光科学研究所において生成―消滅型の強度相関実験を計画していたが、軟X線レーザーの故障と調整のため有効なビームタイムが得られず、年度内に十分な実験を行うことが出来なかった。PZN-9%PTについても同様な理由で強度相関の実験を行うことが出来なかった。 X線のCTR散乱を観察して、PMN-30%PTについて昇温過程で強誘電―常誘電相転移境界に向かいドメイン壁の厚みが増大し境界があいまいになって相転移にともないドメイン壁が消失する現象を観察した。 PZN-9%PTのマクロドメインの成長については、He-Neレーザーを用いてドメイン幅の温度変化を詳細に調べることができた。相転移温度の高温側から温度を降下していくと相転移温度でゆらぎが著しく増大し、温度降下にともないマクロドメインの幅が温度に比例して増大することが分かった。これはマクロドメインの幅が温度降下によってほとんど変化しないPMN-27%PTの場合と著しく異なるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
PMN-PTのドメインの成長過程で観察されるミクロドメインのスケールからドメイン壁全体の緩和時間は数ナノ秒と考えられることが分かったので、強度相関の実験をパルスYAGレーザーを用いて行う見込みが立った。次年度にはパルスYAGレーザーを用いた強度相関の実験を遂行する。PMN-PTで実験がうまくいけば、継いでPZN-PTで実験を行い結果を比較し、とりあえず初期の目的を達成したい。 また、次年度に持ち越したPMN-PTの斜めストライプドメインの誘電応答に関する論文を完成してPRBに投稿する(現在、準備中)。YAGレーザーで観察する予定の分極壁のゆらぎに関する強度相関の論文を作成するとともに、He-Neレーザーで観察したPMN-PTとPZN-PTのマクロドメインの成長に関する論文も作成する。
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Causes of Carryover |
(理由)軟X線レーザーの故障と調整のため強度相関の実験が予定通り進まず、関西光科学研究所への出張が少なかったこと、および論文の作成が遅れ、まだ投稿するにいたっていないたため。 (使用計画)新年度の出張旅費におよび論文投稿費に充当する。
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