2017 Fiscal Year Research-status Report
二光子生成コヒーレントフォノン‐プラズマ結合モードによる半導体キャリア特性の解明
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16K05408
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
欅田 英之 上智大学, 理工学部, 准教授 (50296886)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コヒーレントフォノン / ポンプ・プローブ測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではコヒーレントフォノンの精密測定を行い、光励起キャリアとコヒーレントフォノンの相互作用を通じて、新たな電子物性測定技術の開拓を試みることを目的としている。 2017年度は昨年度に引き続きCdSe量子ドットを用い、コヒーレントフォノン信号の光生成キャリア数依存性を精密に調べた。具体的には時間幅は広いが強度が高いプレポンプパルスによって先に光励起キャリアを生成し、その後透過型ポンププローブ信号を測定することで、キャリア数によってコヒーレントフォノンの振幅および周波数がどのように変化するのかを調べた。 このような測定を行った場合、通常のバルク半導体ではキャリアとコヒーレントフォノンの結合モードが観測されるが、今回の実験ではキャリア数の増加とともにコヒーレントフォノンの生成が妨げられるのが観測された。これは励起子ボーア半径よりもサイズが小さな量子ドットを用いていることに由来するものであると考えられ、プレポンプパルスで作られた電子と正孔がドット内で個別に閉じ込められることによってそれぞれがフェルミオン的な性質を示し、その後のラマン過程を妨げていることによる。このことは我々が用いているサイズのCdSe量子ドットにおけるコヒーレントフォノン生成過程が、ほぼ理想的な二準位電子系と格子との相互作用によるものであるとみなせることを意味しており、電子系のコヒーレント操作によってフォノンの生成を制御できることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、赤外極短パルス光源の作製を初年度に行う予定であったが、問題がいくつか生じ、現在も継続中である。 そこで、並行して、先に赤外用ポンプ・プローブ光学系を構築した。テスト試料としてワイドギャップ半導体単結晶を用い、800nmのパルス光でコヒーレントフォノンが測定できることを確認している。 また、当初は最終年度に予定していたプレポンプパルス生成キャリア存在下のコヒーレントフォノンの観測を前倒しで行った。量子ドットで得られた結果は我々が当初予想していたものと大きく異なっていた。そのため今年度に得られた結果は今後の研究にさらなる新しい可能性を見出すものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、まず赤外極短パルス光源を完成させ、昨年度に作った光学系を用いてコヒーレントフォノンの観測を行う。信号の減衰および周波数が励起キャリア数によってどのように変化するかを調べ、ホール易動度との相関を検討する。 さらに、2017年度に得られた結果を発展させ、励起子ボーア半径よりもサイズが大きい量子ドットに対しても同様な測定を行い、励起子分子に起因するラマン過程を経たコヒーレントフォノン生成を試みる。
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Causes of Carryover |
進捗状況で述べたように、赤外ポンププローブ光学系は完成したが、光源はまだ作製中であった。そのため赤外測定で使用予定であった試料をまだ購入していない。 本年度は光源も完成する見込みであり、この次年度使用額を用いて当初の予定通り半導体試料を購入する。
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