2017 Fiscal Year Research-status Report
イオンゲルによりゲート制御された二層グラフェンのサイクロトロン共鳴に関する研究
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16K05422
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
竹端 寛治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主幹研究員 (50354361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 真琴 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究主任 (00622250)
関根 佳明 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究主任 (70393783)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二層グラフェン / サイクロトロン共鳴 / イオンゲルゲート / 遠赤外領域光ファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、SiC上にエピタキシャル成長された二層グラフェン試料に関してイオンゲルを用いた電気二重層電界効果高濃度電荷制御により電荷中性点を含み電子側およびホール側それぞれの励起バンドを含めた幅広いエネルギー領域でフェルミ準位を制御させた状態で高精度なサイクロトロン共鳴吸収測定を行うことで、二層グラフェン特有のランダウ準位分裂や励起バンドにおける有効質量などの電子状態を明らかにすることを目的とする。 本研究2年目である平成29年度には、SiC上にエピタキシャル成長された高移動度二層グラフェン試料をデバイス加工し、イオンゲルゲートで電荷制御をしながらサイクロトロン共鳴測定および輸送現象測定の同時測定可能なサンプルを作製した。そのサンプルを用いて本研究の主目的である励起バンドを含めた広い領域でフェルミ準位を制御させた状態で高精度なサイクロトロン共鳴吸収測定および輸送現象測定の同時測定を行った。測定の結果、ゲート電圧Vg = 0 Vにおいては一つのサイクロトロン共鳴吸収と一成分のシュブニコフ‐ド・ハース振動が観測された一方でVg = -1.0 V以下の負のゲート電圧印加状態ではサイクロトロン共鳴測定において新たにもう一つピークが現れると共にシュブニコフ‐ド・ハース振動においても更に一成分追加で出現することを発見した。これらの実験結果からVg = 0 Vで既に高濃度ホールドープ状態である二層グラフェン試料に対し、更に負のゲート電圧印加に依り非常に高濃度にホールドープされたことで励起バンドにまでホールが誘起され、その結果、励起バンドに起因するサイクロトロン共鳴吸収およびシュブニコフ‐ド・ハース振動が新たに観測されたと考えられる。今回の測定で初めて励起バンドに対応するサイクロトロン共鳴吸収が観測されたことで励起バンドのランダウ準位分裂や有効質量などの電子状態に関する知見が初めて得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は本研究2年目であるが、初年度に引き続き(1)サイクロトロン共鳴測定するためのイオンゲルを塗布した二層グラフェンサンプルの作成、(2)中赤外線領域光ファイバーを用いた強磁場磁気分光測定プローブ開発、および(3)複数の初期ドープ量の異なる高移動度SiC上成長二層グラフェン試料の製作を行い、更にこれらの結果を踏まえて(4)作成された二層グラフェンサンプルについてイオンゲルゲートを用いて電荷中性点を含み励起バンドを含めた幅広いエネルギー範囲でフェルミ準位を制御させた状態で高精密なサイクロトロン共鳴測定を行う予定であった。 (1)および(3)に関して、昨年度から引き続き取り組んだ結果、イオンゲルの開発や高移動度二層グラフェンの成長を行い、それらを用いて複数個のイオンゲルゲート付きサイクロトロン共鳴測定および輸送現象測定の同時測定用サンプルの作製を行った。 その作成されたサンプルを用いて、(4)イオンゲルゲートを用いて電荷中性点を含み励起バンドを含めた幅広いエネルギー範囲でフェルミ準位を制御させた状態で高精密なサイクロトロン共鳴測定を行った。その結果、イオンゲルゲートによりサンプルのフェルミ準位を制御するに従って、サイクロトロン共鳴吸収が系統的に変化する様子が観測された。特に、負のゲート電圧印加により高濃度ホールドープされた状態で励起バンドに関するサイクロトロン共鳴吸収を初めて観測し、その電子状態についての知見を得るなどの成果を得た。これらの成果は本研究の主目的を既に概ね達成するものであり、当初計画を上回る進捗状況である。 一方、(2)に関しては前年に判明した技術的問題が解決したとは言えない状況であり、やや進捗が遅れている。 以上の進捗状況から本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度であるので、主に前年度に作製されたサンプルに関してイオンゲルゲートを用い幅広いエネルギー範囲でフェルミ準位を制御させた状態で高精密なサイクロトロン共鳴測定および輸送現象測定の同時測定を進め、二層グラフェンに関する、特に詳細が解明されていない励起バンドの電子状態に関する知見を得ることを目指す。本研究ではサイクロトロン共鳴測定および輸送現象測定の同時測定を行っており、二通りの実験から得られる情報を総合的に解析することで、より詳細な電子状態に関する知見を得る。 得られた研究成果は国内学会や国際会議、および学術誌上での発表を行う。 また、やや進捗が遅れている中赤外線領域光ファイバーを用いた強磁場磁気分光測定プローブ開発に関しては早急に技術的課題を検討の上、対応策を見出し、強磁場磁気分光測定プローブの製作、測定を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 本研究の当初計画においては、平成29年度には主に遠赤外領域光ファイバーを用いた磁気光学測定プローブの試作に研究費を使用する計画であった。しかし、光ファイバー自体の光減衰、ファイバー同士の接続、およびその接続部での光減衰、光ファイバーと分光器、検出器との結合などの様々な技術的課題の検討を継続して行っていたため今年度中には磁気光学測定プローブ試作が完了せず、次年度使用額が発生した。
(使用計画) 今年度は主に磁気光学測定プローブの試作、国外旅費、および国内旅費などに予算支出を予定している。磁気光学測定プローブの試作に関しては、上述のように前年度計画がずれ込んだものである。国外旅費、および国内旅費は本研究で得られた研究成果を国際会議および国内学会などで発表するためである。
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Research Products
(2 results)