2016 Fiscal Year Research-status Report
フラストレーションが生む新奇量子磁性状態と強誘電性
Project/Area Number |
16K05425
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
桃井 勉 国立研究開発法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 専任研究員 (80292499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フラストレート磁性体 / スピンネマティック / 阻視化ダイナミクス / トポロジカル相 / 磁気相図 / 2成分ボーズ気体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)光学格子上にトラップされたフェルミ粒子とスピン1を持つボゾン粒子の混合冷却原子系で、幾何学的なフラストレーションを持つスピン系が実現することを示した。ボゾン自由度が作るスピン系は、エネルギー減衰があるフラストレートスピン系になる。この系におけるスピンダイナミクスを数値的に調べ、幾何学的フラストレーションと秩序変数の点欠陥が阻視化ダイナミクスに与える影響を調べた。フラストレーション効果により、阻止化が異常に遅くなるふるまいが観測された。 2)SU(n)対称性を持つ1次元のフェルミ冷却原子系のモット絶縁相において出現することが期待される対称性に守られたトポロジカル相が持つトポロジカルな性質を調べた。密度行列繰り込み郡法を用いた数値計算と行列積状態を用いた解析を行った。また、Zn×Zn対称性に守られた複数のトポロジカル状態の内、トポロジカル指数の異なる状態が複数出現する相図を得た。 3)磁場中の三角格子反強磁性体における磁気状態は、2成分のボゾン系の凝縮状態と本質的に同じである。2成分の凝縮体間の位相差が磁性状態を決めるものの、この位相差を理論的に決めることは難しく、これまでスピン波展開を用いた解析しかなされていない未解決の問題である。今回、厳密対角化とクラスター平均場近似を用いて、スピンのXY異方性が強い時に実現する磁気相図を調べた。クラスター平均場近似の結果はスピン波展開の結果と良い一致を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度からのやりかけのVolborthiteの磁性の研究は、論文を完成させ、出版することが出来た。日本物理学会において、この成果に関するシンポジウム「強磁性相互作用を含むフラストレート量子磁性体の新奇物性」を開催し、研究成果を報告した。分野内への宣伝も順調である。我々の理論的予言を検証するための実験も、国内の実験家により進行中である。 また、これまで経験のない冷却原子系のスピン系の緩和現象の研究をその分野の専門家と共同で行えたことは、知見が広がり役に立った。
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Strategy for Future Research Activity |
ボルボサイトにおいて観測されている、熱ホール効果と我々の理論モデルの関係を理論的に検証する。また、フラストレート磁性体における誘電性の研究を、進めたい。
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Causes of Carryover |
新たに当プロジェクトの理論と密接に関連した実験結果が実験グループより出されており、その実験結果を説明するための理論研究も進めることとした。研究解析及び論文作成が年度内に間に合わず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文発表および国際会議での発表を次年度に行うこととして、未使用額はその経費とする。
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