2017 Fiscal Year Research-status Report
汎関数くりこみ群法によるスピン・電荷・軌道結合系の電子状態の解明
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16K05442
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
土射津 昌久 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (70362225)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / くりこみ群法 / 銅酸化物高温超伝導体 / 電荷密度波 / 電子ネマティック状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の銅酸化物高温超伝導体における実験研究の進展により、長年未解明であったアンダードープ領域での電子状態が再び注目されている。STMおよびX線散乱実験による「電荷密度波状態」の直接観測に加えて、最近の磁気トルクの角度依存性の研究から、2次元電子系の4回対称性が破れた「電子ネマティック状態」の実現が電荷密度波状態よりも高温で実現することが見出され、擬ギャップ領域の電子状態の解明に向けて大きな注目を集めている。
本年度は特に、銅酸化物高温超伝導体の「電荷密度波状態」と「電子ネマティック状態」に着目し、我々が開発してきた新しいくりこみ群法であるRG+cRPA法を用いて電荷感受率を詳細に解析した。その結果、q=0 と Q_a の波数において、p 軌道の電荷感受率の増大が得られた。q=0 での電荷感受率の発達は、磁気トルクの実験で示唆されている電子ネマティック状態の実現とコンシステントであり、また q=Q_a での発達は電荷密度波状態の特徴を説明することが可能である。q=0 の電子ネマティック状態の感受率が最も強い増強を示すが、この電子ネマティック状態の実現下においては、電荷密度波状態の2つの波数の縮退が解け、一方の電荷密度波状態が増強される。以上のシナリオにより、銅酸化物高温超伝導体のアンダードープ領域の状態が説明されることを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに開発してきたRG+cRPA法をさらに発展させ、銅酸化物高温超伝導体における電荷密度波状態に加えて、電子ネマティック状態を説明することに成功した。この結果は、銅酸化物高温超伝導体のアンダードープ領域の電子状態に関する最近の実験結果を説明する理論結果であり、長年未解明であった擬ギャップ領域の電子状態の解明に向けての大きな進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を推進するとともに、ダイマー型分子性導体の電荷揺らぎの解明に関する研究も推進する。
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Causes of Carryover |
本年度の初めに所属機関の異動があり、異動後での研究環境を整備するうえで、数値計算用のディスクストレージの拡充を行う必要があり、当初予定していた計算機器とは異なる機器を購入したため。次年度は、今年度の繰越し額と次年度の予算を合わせて研究環境のさらなる整備充実を図る計画である。
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Research Products
(12 results)