2018 Fiscal Year Annual Research Report
Search for the polar state of superfluid 3He in narrow cylinder
Project/Area Number |
16K05455
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小原 顕 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (50347481)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超流動3He / P波超流動 / フェルミ超流動 / 核磁気共鳴 / 低温プリアンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,理想的なP波超流体である超流動3Heを,コヒーレンス長の10倍程度の細さの円筒容器に閉じ込め,新奇な超流動相を探索することを目的とした研究であった.相の同定にはNMRを用いる.すなわち,帯磁率の温度変化からスピンの対状態が,周波数スペクトルとパルスNMRのチップ角依存性から相の詳細がわかる.過去にも2例,このような系でNMR実験が行われていたが,円筒の幾何学的な情報が不明であったこと,また,バルクの信号と区別がつかず,新奇相であるという決定的な証拠が得られていなかった. そこで,今回は円筒容器としてフォトニック結晶ファイバを採用した.我々が採用したファイバでは,長手方向には任意の長さの円筒空間を実で,また,電子顕微鏡を用いた観察によって,円筒径がそろっていることが確認できた.ただし,無駄な肉厚が多く,NMRの受信コイル中に締めるスピンの数(充填率)が限られてしまうという問題点があった.そこで,本研究ではフッ酸をもちいて無駄なガラスを除去し,かつ,積層して充填率を向上させることにした.さらに,数値計算と実測の両面からNMRコイルの最適化を行った,また,観測される信号が極小であり,熱雑音や室温部における雑音電波の影響を強く受けることが予想されるため,低温部にプリアンプを設置することにした.本研究では,2種類の低温アンプを作成し,実際にりようすることでその有効性を確認した. 残念なことに,2018年後半より国内におけるヘリウム供給事情が極端に悪化したため,大型の希釈冷凍機と断熱消磁冷凍機を稼働させることができず,超流動転移温度まで冷却することができなかった.しかし,20mK において円筒容器中の液体3HeのNMR信号の観測には成功しているので,ヘリウム供給が回復すれば,短時間で実験が再開できるものと思われる.
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