2018 Fiscal Year Research-status Report
ゼオライトにおけるポーラロン誘起金属絶縁体転移をめぐる局所場ゆらぎ
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16K05462
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| Research Institution | Gunma National College of Technology |
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Principal Investigator |
五十嵐 睦夫 群馬工業高等専門学校, 電子メディア工学科, 教授 (60259819)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | ゼオライト / NMR / 絶縁体金属転移 / ポーラロン / スピン格子緩和時間 / 活性化エネルギー / カチオン |
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| Outline of Annual Research Achievements |
Na原子を吸蔵したLSX型ゼオライトは、吸蔵濃度を増加させると高濃度の飽和吸蔵量近辺において絶縁体金属転移により絶縁相から金属相へと変化する。そして、この金属相についてのみ、昇温にともなって特異的な熱活性型常磁性磁化が現れる。その活性化エネルギーは、吸着原子のものと推察される熱活性型の不規則運動におけるそれと同程度の値を示す。この一致は偶然ではなく、常磁性磁化が局所場のゆらぎに起因したポーラロン状態に伴うものであると理解せざるを得ない。このように特異的なポーラロンの生成過程を解明するには、局所場の揺らぎが具体的にどのような運動に伴うものであるかを特定する必要がある。しかし、これまでそのような観点からの研究はほとんどおこなわれてこなかった。
以上の研究文脈のもと、本研究課題の着手段階においては無吸蔵の試料について23Na核のNMRのスピン格子緩和時間T1の温度変化が観測された。その結果は、あらかじめ無吸蔵で存在するNaカチオンが既に熱活性型の不規則運動をしていることを示すものであった。これはそれまでなされていた理解と異なる。もともと揺らぎは存在し、それと金属相がタイアップして相乗効果を発揮し、絶妙な絡み合いのもとで常磁性磁化が発現したと捉える方が自然であることになるからである。それゆえこの発見は、Na原子を吸蔵したLSX型ゼオライトにおける磁性発現の理解について発想の転換を求めるものであった。そして、無吸着時に観測された不規則運動の活性化エネルギー値は0.02eVにも満たないものであったことも判明した。この値は、常磁性磁化に伴う高濃度吸蔵時に現れる値である0.1eV程度とは好対照である。無吸蔵であるとこのような数分の一以下の値であるのは、高濃度吸蔵の場合と比べてはるかに移動がしやすいサイトの組み合わせが存在することを意味する。このことがこれまでで最大の成果である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
以上と並行し、Rbを吸蔵させた場合についての実験が行われた。その結果、Naをはるかに凌駕する金属性を示す実験結果が得られた。そのため、Na吸蔵の場合の論文報告は一時保留とし、Rbの強い金属性を論文報告することを優先する状況にある。現在は、Rbを吸着させた場合について認められる金属性の程度をNa吸蔵の場合と比較して論じた論文の投稿準備がほぼ完了した状態にある。Rb吸蔵時の金属性は単純金属とはかなり異なっている可能性があって強相関系としての研究発展が望まれるものであるが、研究期間を延長していることを考えあわせ、現在までに得られている結果を論文発表することを最優先して今後の研究期間を活用する。
今後は、Naの場合に対して低濃度から中濃度に至る吸蔵量領域における丁寧な考察をおこない、取得済みの実験データを公刊するに際して慎重を期する。現在は、数少ないながら存在する既報のＸ線構造解析の結果を慎重に検討しているところであり、どのような運動が許容されるものであるかについて精査中である。
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| Strategy for Future Research Activity |
上記したように、Rbを吸着させた場合のLSX型ゼオライトの金属性についての成果報告を最優先して進める。報告は学術論文によるものとし、その内容はNaを吸蔵させた場合の特性との特徴比較とする。実験データからはRbの吸蔵においてバルク状態では単純金属であったものが強相関系の様相を帯びることが示唆されているものの、準備する原稿の内容は単純に金属的性質に対する言及に留める。それだけをとってみても、Naの場合よりRbでは遥かに金属性が顕著となることは報告することとなり、内容は依然として顕著な新規性があると言える。そのように題材を限るのは、これまでにはまったく行われたことがない研究内容であるゆえに相関性それ自身が争点となってしまって論文化が遅れることを避けるようにするためである。
他方、Na原子を吸蔵したLSX型ゼオライトでは、低濃度から中濃度に至る吸蔵量領域について丁寧な考察を継続しておこない、取得済みの実験データを慎重な検討のうえで論文化していくことにする。その際には、数少ないながら存在する既報のＸ線構造解析の結果を慎重に参照することが重要であり、また、光学スペクトルの振る舞いとの比較検討も補完的に重要な役割をなす。参照可能な情報が少ない状況から、いかにして描像の範囲を絞り込めるかがカギとなる。そのような絞込みにより、ゼオライトにおける局所場揺らぎの全体像を得るための基点となるような知見の整備を目指す。
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| Causes of Carryover |
Rbを吸蔵する実験を進めることができるようになったため、それに対して支出計画を変更する必要が生じた。残額は、過不足なく研究遂行に役立てる。
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