2016 Fiscal Year Research-status Report
先進的な高圧下物性測定技術によるウラン強磁性超伝導物質の研究
Project/Area Number |
16K05463
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
立岩 尚之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50346821)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 高圧実験 / ウラン系強磁性超伝導 / スピンのゆらぎ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.一軸圧力下磁化測定用圧力セルの開発:静水圧下磁化測定用圧力セルを改造して一軸圧力下の磁化測定を行う試みを行った。一軸圧力下の実験では、圧力の制御が重要であり、室温から低温まで一定の圧力が試料に加わることが重要である。これまでの静水圧下磁化測定用圧力セルでは、圧力の温度変化が大きいため、「皿バネ」を加えることでこの問題に対処に取り組んだ。皿バネの仕様や個数を変化させ、適切なセルの設計の検討を行い、必要となる皿バネの条件を調べた。
2.UGe2, URhGe, UCoGeなどウラン系強磁性超伝導物質の研究を行う上で、磁化のデータの解析の指針となる理論が必要となる。3d電子系遷移金属間化合物の強磁性状態を解明する上で重要な役割を果たした「スピンゆらぎ理論」のウラン系強磁性化合物への適用を検討した。合計78個数のアクチノイド系強磁性物質の磁化データを高橋らによる理論モデルを使って解析し、5f電子系の強い遍歴性と、3d電子系と5f電子系の共通性を明らかにした。
3.URhAlやUCoAlなど超伝導を示さないウラン強磁性化合物の磁気臨界現象を系統的に調査し、既存の理論モデルとの対応関係を調べた。特にURhAlは、温度―磁場―圧力相図における連続相転移線が形成する“Wing structure”について、近年の盛んに研究が行われ、「三次元イジングモデル」に基づいて解釈されている。研究代表者は磁気臨界現象を詳細に検討した結果、URhAlの磁気臨界現象に主要な役割を果たすのは時期相互作用の低次元性であることを突き止め、URhAlの「二次元イジング」系の可能性を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一軸圧力下磁化測定用圧力セルの基本的指針が決定され、またUGe2, URhGe, UCoGeなどウラン系強磁性超伝導物質の研究を行う上で重要な指針となる解析手法の整備が完了した。特に「スピンゆらぎ理論」によるアクチノイド強磁性化合物の適用についてその指針が得られ、3d電子系と5f電子系の共通する普遍性が明らかにされたことで、今後の研究の進展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.UGe2, URhGe, UCoGeなどウラン系強磁性超伝導物質の研究を行う。申請代表者が開発した、先進的な10 GPa級静水圧下物性測定システムを用いて、バルクの超伝導と強磁性の共存領域の同定など、未解決な問題を解決する。オリジナルの高圧下磁化測定用圧力セル(セラミックアンビルセルmCAC)を駆使し、「超伝導が現れる特異な強磁性状態」に視点を起き、総合的にウラン強磁性超伝導の高圧研究を行う。さらに一軸圧力下の実験を行い、超伝導秩序変数や、磁気異方性に着目した研究を行う。
2.URhAl, UCoAl等、超伝導を示さないウラン強磁性化合物の磁気臨界現象を系統的に追求し、既存の理論モデルとの対応関係を調べる。特に磁気相互作用の低次元性に着目し、臨界現象のrelevant factorを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
静水圧下磁化測定用圧力セルの仕様変更を行ない、一部の高圧セルの発注が遅れたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に静水圧下磁化測定用圧力セルの発注を行う。
|
Research Products
(7 results)