2017 Fiscal Year Research-status Report
電荷または軌道自由度による擬近藤効果と遍歴描像への接続
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16K05464
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
倉本 義夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任教授 (70111250)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 軌道近藤効果 / 四極子秩序 / 遍歴多極子 / 異方的近藤格子 / 電荷近藤効果 / 超伝導 / バンド構造 / 軌道縮退 |
Outline of Annual Research Achievements |
軌道自由度による近藤効果は,理論的提案から30年を経過しているが,まだ実験的な確証はない。今までの理論的扱いで想定している伝導電子のスペクトルは,実際の物質の特徴を取り入れていないため,現実物質との対応がつきにくいことが問題である。すなわち,実際の物質のバンド構造では,軌道縮退はブリルアン領域の高い対称点でもせいぜい4重縮退である。これは平面波状態とは大きく異なる。 本年度の研究では,ワニエ関数を用いて,有効ハミルトニアンを実空間で求め,一般の波数では軌道縮退がない場合を想定して,軌道交換相互作用の繰り込みを実行する理論の定式化を行った。さらに神戸大学の研究者と協力して,比較的単純なバンド構造を持つ,PrMg3とPrPb3を比較して,有効軌道相互作用の違いをもたらす機構を明らかにしつつある。PrMg3,PrPb3とも4f電子は非クラマース二重項の結晶場基底状態にあるが,実験的にはPrMg3に軌道近藤効果の兆候は見られない。一方,PrPb3は低温で四極子が長周期秩序を示すことが知られている。四極子モーメントの大きさは周期的に変化しており,その最大値も結晶場基底状態から期待される値よりも小さいので,軌道近藤効果が働いている可能性がある。バンド構造を見ると,PrMg3ではフェルミ面近くに軌道縮退した伝導バンドは存在しない。一方PrPb3では軌道縮退のある状態につながる伝導バンドがフェル準位をまたいでいる。これらの結果の一部は物理学会で報告した。 一方,CeRu2Al10などの斜方晶系は,特徴のある異方的磁気秩序や電気伝導を示すことで知られている。我々はここ数年来,異方的近藤格子モデルを用いて理論的研究を行ってきた。本年度は,このモデルの枠内で説明できる特徴をまとめて出版論文を公表した。 さらに,KEKを中心とする実験グループと協力して鉄系超伝導体の局所構造と超伝導への影響について共著論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画とは別に新しい研究協力を開始した。具体的には,エネルギーバンド構造を計算する専門家との共同で,現実的な電子構造に基づいた電荷近藤効果に関する初めての理論を構築しつつある。また,実験家と協力して広い意味の近藤効果が重要になっている可能性が強い強相関系の超伝導と局所格子構造との関連を論じた。 一方,スピンによる近藤効果に関しても,現実の異方的物質の特徴を捉えたモデルにより,当該系の興味ある特徴の理解を格段に推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現実物質の軌道近藤効果の理解をさらに推進するため,バンド計算の専門家との協力をさらに推進する。具体的にはPrTi2Al20など,単位格子に多くの原子を含む物質にターゲットを広げ,実験的に観測されている興味ある圧力依存性と軌道近藤効果の関連についても検討したい。また,電荷近藤効果を含む拡張については,Smを含むスクッテルダイト系やSmTa2Al20系の理解も視野にいれて研究したい。
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Causes of Carryover |
(理由) パソコン関連のハードウェアとして,現有の備品がもう少し使えると判断し,購入を延期した。また,外国出張については,種々の状況から実施しなかった。
(使用計画) 平成30年度に,最新のパソコン関係のハードウェアを更新する予定である。また,本年度の外国出張に当科研費から旅費を充当する予定である。
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[Journal Article] Structure determination in thin film Ba1-xLaxFe2As2: Relation between the FeAs4 geometry and superconductivity2017
Author(s)
Kensuke Kobayashi, Akiko Nakao, Sachiko Maki, Jun-ichi Yamaura, Takayoshi Katase, Hikaru Sato, Hajime Sagayama, Reiji Kumai, Yoshio Kuramoto, Youichi Murakami, Hidenori Hiramatsu, and Hideo Hosono
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 96
Pages: 125116-1 -5
DOI
Peer Reviewed
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