2017 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル表面状態における超伝導状態および渦糸芯電子状態の解明
Project/Area Number |
16K05465
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩谷 克也 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (00373275)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々なトポロジカル超伝導候補物質のトポロジカル表面状態およびその超伝導状態を走査型トンネル顕微鏡(STM)により観察し、トポロジカル超伝導特有の性質を実験的に明らかにすることを目指した。 最終年度では、トポロジカル超伝導候補物質のひとつであるPbTaSe2の渦糸芯における電子状態の解明を目指した。その結果、単結晶試料を劈開することによって、局所的には原子レベルで平坦な表面が得られるものの、渦糸芯観察に必要な広い範囲では表面の凹凸が大きくかつ表面構造が不均一なことがわかり、物質本来の性質を調べることが困難であることがわかった。 また、高温超伝導体と強いスピン軌道相互作用をもつ金属から構成されるヘテロ構造は、トポロジカル超伝導発現が理論的に予想されている系である。本研究では、高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8の上にBi薄膜を成長させ、その表面構造、電子状態をSTM観察した。その結果、原子レベルで平坦なBi薄膜の作製に成功し、膜厚に依存して電子状態が変化することを明らかにした。理論的に予想されている磁場中ステップエッジにおけるマヨラナ状態の存在は、現時点では確認されていない。今後さらに高分解能測定を行う必要がある。 さらに、渦糸芯でのマヨラナ束縛状態検出に有効なスピン偏極STMに用いる磁性探針の作製を行った。W探針にFe薄膜を蒸着し、探針先端のスピンの向きを確認するための標準試料として反強磁性FeTe単結晶表面を用いた。FeTe表面に存在する過剰Feを探針で拾うことにより、探針形状を調整し、0.7nm程度の空間分解能をもつ磁性探針を比較的容易に作製できるようになった。 以上まとめると、マヨラナ状態の直接観察には至らなかったものの、研究全体を通して薄膜作製技術、磁性探針技術などを新たに習得し、今後のトポロジカル超伝導研究へ向けた土台を築くことができた。
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Research Products
(3 results)