2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05473
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯川 諭 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (20292899)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乾燥破壊の確率モデル / パーコレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず乾燥破壊の統計則に関連して、メゾスケールモデルの確率モデルを構築しその解析を行なった。この解析は現在も進行中である。このモデルは、もともと引っ張り破壊を記述するファイバーバンドルモデルを基礎とするモデルであり、乾燥破壊に応用するのは初の試みとなる。また、別の文脈では地震現象などの確率的モデルであるOFCモデルとも非常に近く、簡単なモデルであるが他分野との関連性も深い。
具体的なモデルとして、正方格子上の格子モデルを考え、応力またはエネルギーと見なせる変数をボンドに割り当てる。各ボンドは確率的に分布した閾値を持っている。乾燥破壊現象を念頭にモデルを構築するために、応力変数は時間的に増加するものとする。各ボンドの応力がボンドに割り当てられた閾値を超えると、そのボンドは破壊され亀裂の核生成が生じたとみなす。また、ボンドが持っていた応力変数は周りのボンドに分配される。このあたりはファイバーバンドルモデルと同様の特性であるが、本研究で構成する確率モデルは、応力変数の分配を異方的に行う事でファイバーバンドルモデルとは異なるモデルになっている。またこの性質は亀裂の進展が等方的ではなくある程度の持続長をもって進行することをモデル化している。さらに、OFCモデルと同様に、応力変数へ散逸の効果を取り込む事とした。
このモデルは、散逸を表すパラメーターがある値を取る極限で、ボンドパーコレーションモデルになることを容易に示すことができる。実際、本年度の研究費で購入した計算機で数値シミュレーションをした結果、パーコレーションモデルとしての側面を確認できた。また、散逸パラメータを連続的に変化させていったところ、パーコレーションとしての性質は保たれたまま、臨界指数が連続的に変化していくことが明らかになった。これは新しい発見であり、新たなクラスのモデルを発見した重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の当初研究計画として、まず乾燥破壊の統計則に関連して、メゾスケールモデルの確率モデルを構築しその解析を行い、さらに乾燥破壊現象に重要な応力緩和をモデルに組み込み乾燥破壊の統計力学的性質を明らにすること、また、金属材料を念頭にした結晶粒界の非平衡運動に関して計算機シミュレーションをもちい、微視的自由度を使ったモデル化から、マクロな結晶粒界を表現し、計算機内で非平衡環境を実現して運動をシミュレーションすることにより、結晶粒界の微視的素過程の理解を深めることを目標にしていた。
しかし、本年度構築したメゾスケールの確率モデルにおいて、臨界的性質のサイズ依存性が思ってた以上に大きく、さらに大きなサイズのシミュレーションを行う必要が出てきており、計算機シミュレーションに予定以上の時間がかかっている。また破壊現象の重要な統計的性質である破片サイズの統計分布を調べるためのクラスター解析アルゴリズムがシステムサイズの2乗に比例する計算コストがかかるため、この部分でも計算時間が予定以上に増加している。このような事情から、本年度は結晶粒界のシミュレーションの計算着手まで至っていない。ただシミュレーションを実行するためのアルゴリズムの構想や、プログラムのひな形の準備、周辺サブルーチンの用意などは進めており、次年度には着手する計画である。また、もう一つのテーマである、原子自由度からの第一原理的記述と連続体記述の中間であるいわばメゾスケールの自由度をつかった破壊現象の離散要素モデルを用いた破壊現象の統計則の研究についてもまだ未着手である。こちらのテーマについても、モデルのベースとなる論文のサーベイなど行っており次年度には取り組みを始めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、進捗で述べたように、現在進行中のメソスケール確率モデルの計算および解析を終え、まずは学会発表、また論文発表を行う予定である。また、結晶粒界の非平衡条件下での運動プログラムを完成させ、計算に着手する予定である。また、もう一つのテーマである、原子自由度からの第一原理的記述と連続体記述の中間であるいわばメゾスケールの自由度をつかった破壊現象の離散要素モデルを用いた破壊現象の統計則の研究について、さらなる文献サーベイ、シミュレーションプログラムの構想、各種アルゴリズムの整理、サブルーチンの構築など行い、このテーマでの研究ができる体制に持って行く予定である。
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Causes of Carryover |
現在実施中の問題に、想定以上の有限サイズ効果があることがわかり追加のシミュレーションが必要になった。現在その計算を実行中であり、計画していた論文出版が間にあっていない。そのため、出版関係の費用が次年度に繰り越されることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度中に、現在計算中の問題を解決し、論文発表を行う際に使用する。
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