2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05480
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡部 豊 首都大学東京, 理工学研究科, 客員教授 (60125515)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モンテカルロ法 / クラスターフリップ法 / レプリカ交換法 / GPU / イジングモデル / 有限サイズスケーリング / フラストレーション / スピンアイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、GPUを用いた高速計算により、スピン系の統計力学の高度計算を実行する。今年度は、スピンアイス物質を念頭に置いた、パイロクロア格子上のスピン系の統計力学の研究を開始した。これは、ロシアの極東連邦大学自然科学系のNefedev教授のグループとの共同研究である。研究代表者が5月に4日間、極東連邦大学に行き、講演と研究打ち合わせを行うと共に、極東連邦大学の大学院生1名を12月から3ヶ月間招き、共同研究を行った。 第1の研究として、パイロクロア格子上の強磁性相互作用系の相転移をGPUを用いた高精度大型計算で論じた。具体的に、パイロクロア格子上のイジングモデル、XYモデル、ハイゼンベルグモデルの相転移温度を精密に決定した。さらに立方格子上のモデルのデータと比較して、ユニバーサル有限サイズスケーリングが成立することを示した。計算は、我々のグループが開発した、GPUを用いたクラスターモンテカルロ法により行った。 第2の研究として、フラストレーションを生ずる反強磁性系について、磁場効果と希釈効果の役割を論じた。具体的に、[111]方向の磁場をかけると、2つの磁化プラトーを示すことが知られているが、磁気イオンを希釈すると、5つの磁化プラトーを示すことを明らかにした。これは、フラストレーションが希釈により部分的に解消されるためで、そのメカニズムを、パイロクロア格子の基本構成要素である正四面体におけるスピン構造の希釈による変化により説明した。計算手法としては、磁場と温度の2つのパラメータに関するレプリカ交換モンテカルロ法を用いた。 以上の2つの研究成果は、すでに論文として公表したが、さらに、フラストレーションのある系で興味のある、残留エントロピーについて、Wang-Landau法を用いた直接計算により、その希釈度依存性を高精度に論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPUを用いた高速計算の適用例として、スピンアイス物質を念頭に置いた、パイロクロア格子上のスピン系の統計力学の研究を開始した。これは、ロシアの極東連邦大学のNefedev教授のグループとの国際共同研究で、研究代表者が先方に行き、一方、ロシアの大学院生を共同研究のために3ヶ月間招くなど、実質的な共同研究を行っている。すでに、この共同研究の成果として2つの論文を公表し、また、投稿中のものもある。おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえ、国際共同研究である、パイロクロア格子上のスピン系の統計力学の研究を一層推進していく。 昨年度、力を入れた、準格子上のスピン系の統計力学の計算も、GPUを用いた高精度大型計算により、調べることは多くあり、また、開発中の「2サイズ確率変動クラスターアルゴリズム」の研究を、論文としてまとめていく。
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Causes of Carryover |
当初、初年度に購入を予定していたBTOパソコンは、使用するGPUの性能向上がアナウンスされていたため、次年度に購入する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度、購入を見送った BTOパソコンを購入すると共に、ロシアとの国際共同研究のための、旅費に使用する。
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