2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05486
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任講師 (80542274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西森 拓 広島大学, 理学研究科, 教授 (50237749)
池田 幸太 明治大学, 総合数理学部, 専任講師 (50553369)
参納 弓彦 明治大学, 総合数理学部, 特任講師 (60612554)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己駆動粒子 / 自己組織化 / 集団運動 / 力学系 / リズム現象 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、自己駆動粒子の集団に現れるリズム現象の解明を目指している。研究開始までに、樟脳粒と呼ばれる水面を滑走する粒子を狭い領域に多数浮かべると、自発的な振動現象(動いたり止まったりを繰り返す現象)が認められていた。本年度は、この現象の発現条件を詳しく調べる実験を行った。具体的には、粒の個数と水面の大きさを変数として、運動様相に関する相図を作成した。その結果、連続運動と振動運動の間の臨界個数は水相の大きさに概ね比例することが示された。このことは、粒の運動性を決める表面張力にある臨界値があり、それを下回ると、粒が停止することを示している。過去の当該研究室の成果と比較することで、その臨界値を概算したところ、樟脳飽和水溶液の表面張力と概ね一致した。これにより、残る課題は停止した粒が再び動き出す機構を解明することとなった。 上記の実験の過程で、単一の樟脳粒でも、狭い水相では振動運動が現れることを見出した。そこで、水相のサイズを連続的に変化させられるシステムを構築し、詳しく調べた。多粒子系では非周期的な振動であったが、単一粒子では周期的な振動が認められた。このことから、機構解明に向けて、これまでと方向を転換し、単一粒子で周期振動が現れるメカニズムの解明に焦点を絞ることとした。これに成功すれば、多体系は単一粒子のグローバルカップリング系としてとらえることが可能である。 理論的な解析に関しては、従来の樟脳粒の運動の数理モデルに、水相の樟脳濃度場の時間変化を加えた連立微分方程式系の構築を試みている。単一粒子の周期振動に絞ることができたため、適切な縮約を行うことで、2変数系の連立微分方程式系に落とし込めるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、キーとなる物理パラメータがわからなかったために、初年度は手当たり次第に関係する物理パラメータを振って、相図を作成することを計画していた。実際に実験を行ったところ、水相の大きさをパラメータにした実験結果から、振動運動の「停止」が水相の表面張力で決められていることを示すことができた。それに加えて、単一粒子で周期振動が現れることを示すことができた。これにより、個数、つまりは粒子間相互作用は振動運動を生じるための必要条件ではないことが明らかにできたので、より実験を単純化することができた。 また、この結果によって、当初、2年目以降に予定していた数理モデルの構築に向けて、明確な指針を与えることができた。つまり、単一粒子の周期振動をモデルで示せばよいことになった。当初、モデル作成に当たって、粒子間相互作用がどのように行われているのか(表面張力を介しているのか、流体相互作用なのかなど)が不明確であったため、それらを明らかにすることから始めなければならなかったが、今年度の実験結果から、これらを考えることなく、メカニズム解明に進むことができる。 以上のことから、当初の計画よりもより明確な形で最終目標に向かうことができるようになっており、初年度の研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
単一粒子系に焦点を絞って、場の表面張力および水相サイズに依存した運動様相の変化を調べる。それらの結果を踏まえて、数理モデルによる振動運動の再現を試みる。その際、運動方程式と場の平均しょうのう濃度の2本の常微分方程式で再現することを目指す。常微分で難しいことが分かれば、偏微分方程式に拡張することを考える。 以上の成果が出てから、多粒子系に拡張し、多体系における非周期振動の機構解明へと研究を進展させていく。
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Causes of Carryover |
予算執行に伴い、必要なものを購入し、研究を遂行した。物品等の金額が、当初予定していたものと正確には一致しなかったため、若干のずれが生じ、少額の残が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)