2016 Fiscal Year Research-status Report
マスター方程式によるネットワーク上の感染症ダイナミクスの解析
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16K05507
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
根本 幸児 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60202248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 雄央 茨城大学, 理学部, 准教授 (10528425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 感染症ダイナミクス / ネットワーク科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.複数の感染源が引き起こす感染症の爆発的広がり 我々はレギュラーランダムグラフ上でsusceptible-weakened-infected-removed(SWIR)感染モデルの有限シード(初期感染者)比率からの振る舞いについて調べた。モンテカルロシミュレーションとapproximite master equation(AME)の数値計算の計算からこのモデルでは二つの臨界感染率が存在することが明らかになった。最初はRノードクラスターのパーコレーション転移であり,二番目はそのクラスターサイズのとびによる一次転移である。AMEの結果によりこのような転移はネットワークの次数が大きくかつシード比率が小さいときに出現することがわかった。 2.ネットワーク上の感染症における隔離対策の効果 我々はレギュラーランダムグラフと無相関スケールフリーネットワーク上のsusceptible-infected-removed(SIR)モデルを用いて隔離対策がどの程度有効を調べた。ここでの隔離対策は感染者が発生したときある確率fでその感染者と隣接する感染者をネットワークから切り離すというものである。モンテカルロシミュレーションによりこの対策は事前にワクチンをランダムに配布する対策に比べて優位性を持つことがわかった。またSIRモデルに対し解析的に臨界感染率を導出し理論的にもその優位性を示すことができた。とくに,常に大流行が起こるfat-tailedなスケールフリーネットワークにおいてもわずかにfの値が入るだけである程度大流行を防ぐことが可能であることが明らかになった。また,実際のネットワーク上でもその優位性を示唆する数値的結果も得ることができた。
以上の成果は学会発表済みでかつ学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたAME手法を様々な感染症ダイナミクス上に適用しクラスターサイズ分布を調べる「AME法によるネットワーク構造の抽出」を用いて上述の1.の成果を得ることができた。また,「感染症対策を動的に行うネットワークの記述」においては隔離対策のあるダイナミクスを導入することによって2.の成果を挙げることができているので,概ね順調に進捗しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
「AMEの拡張」と「コミュニティ構造のあるネットワーク上の感染症ダイナミクスの記述」については今年度以降強力に推し進める予定である。
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Causes of Carryover |
計算サーバのワークステーションが当初より高額になった一方で,研究補助の経費を執行できなかったためトータルとして次年度に執行を繰り越す必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の金額とあわせて研究補助費として執行する予定である。
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Research Products
(3 results)