2017 Fiscal Year Research-status Report
超臨界アルコールのラマン散乱:分子間ダイナミクスの古典性と量子性
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16K05508
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
天羽 優子 山形大学, 理学部, 准教授 (20363038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀田 恭男 山形大学, 理学部, 教授 (60202024)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 低振動数ラマン散乱 / 最低振動数モード / 超臨界 / 緩和 / 振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
低振動数ラマン散乱のスペクトルは,数cm-1のみが温度に対して振動数が敏感に変化する。なぜ最低振動数モードだけが温度変化に対する振る舞いが違うのかを調べるため,アルコールを例として,室温1気圧から超臨界状態に至るまでの広い温度・圧力条件でラマン散乱を測定した。今年度はメタノールを対象として実験を行った。 メタノールの低振動数ラマン散乱は,もともと数十から数百cm-1の散乱強度が,他のアルコールに比べて大きく,超臨界状態になっても広い範囲で散乱強度が残り,室温では見えていた幅の広いピークがはっきりしなくなって,100cm-1以下に存在するピークにバックグラウンドが加わった形になる。しかしこれは,分子間振動がくずれたものと考えられるのえ,一定のバックグラウンドとして差し引くのは妥当でない。そこで,複数の振動でバックグラウンドをあらわし,低振動数領域のピークと分離する解析を行った。しかし,ピークの成分の振り分けがうまくいかず,密度で整理した結果は,最低振動数モードとそれ以外のモードの温度依存性がはっきり分かれる結果にはならなかった。 この結果は,化学系協会東北大会で,木村未来、天羽優子、亀田恭男、臼杵毅「超臨界状態に至るメタノールの低振動数ラマンスペクトル」として発表した。 さらに,最低振動数モードの起源を探るため,本テーマに関する補助的な実験として,温度変化の範囲は狭いが,エチレングリコールについて,0.1cm-1以下に至る低振動数ラマンスペクトル温度依存を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
半年遅れて追加で採択になったので,初年度は準備のみで実際の実験が2年目から始まったことによる。メタノール,エタノール,プロパノールについて実験を行う予定であったので,最終年度である今年度は,エタノールとプロパノールについて密度推定のためのラマン測定を行えば,計画通りに進めることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エタノール,1-プロパノールについて,室温1気圧から超臨界状態に至るまでの低振動数ラマン散乱を,最低振動数モードとそれ以外に分けるモデルで解析し,それぞれの振動数と強度の変化を密度で整理する。密度は,同じ温度・圧力条件の高振動数ラマン散乱の振動モードの強度によって推定する。最低振動数モードの振動数のみが他のモードに比べて際立って温度に敏感であるかどうかを確認する。 現在,過去に行った低振動数スペクトルの再解析を行っており,数cm-1の最低振動数モードを主に反映した成分とそれ以外に分けられる結果を得ている。今後は,高振動数領域のスペクトルを測定し,密度の推定を進める予定である。
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Causes of Carryover |
課題のための試薬等を購入していたが,実験の区切りの関係で少額の残額が生じた。次年度に行う実験に必要な消耗品と合わせて使用する予定である。
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