2018 Fiscal Year Research-status Report
ガラス転移における結晶的中距離構造の発達とその役割
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16K05510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 美加 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (00610867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 液体・ガラス転移 / ガラス形成物質 / エイジング / 破壊 / 熱測定 / 時間スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡状態であるガラス状態において、系がより安定な状態へと変化するエイジング現象について、エイジングの完了を実験的に観測できない低温では、一般的に、エイジングを支配する時間スケールを評価することは困難である。そこで、一部のパラメーターの高温側での振る舞いから低温側での振る舞いを予測するとともに、物理的要請を考慮に入れることで、これまでに得た実験結果の詳細な解析を行った。その結果、ガラスのエイジング現象を特徴づける時間スケールは、従来、支持されてきたような、低温で発散的傾向を持つものとは異なり、時間スケールの増加は、これよりはるかに緩やかであることが明らかとなった。一方、ガラス形成物質の破壊現象については、理論的考察を行った結果、亀裂生成時の試料内応力が亀裂の特徴的長さを支配するという解釈を裏付ける理論的根拠を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガラスの特徴的時間スケールの低温での振る舞いについて定量的評価を行うことができ、新しい知見が得られたほか、ガラス形成物質の破壊現象について、これまで得た実験結果の解釈に理論的根拠を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ガラス転移温度より低温側での、深い非平衡状態において、系の振る舞いが、高温側での準安定状態と異なるかどうか、熱測定データを検討する。破壊現象については、薄い試料で、破壊が段階的に進むことについて、その説明を試みる。また、原子間力顕微鏡実験の補足実験と解析を行う。
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Causes of Carryover |
解析や理論的考察に時間を要したため、実験の支出が当初の予想より少なかった。さらに、現在までに得た結果について、昨年、フォースカーブ測定に精通している研究者らと議論し、追加の実験や解析をした方が研究の質を高められることが明らかになった。そこで、今後は追加の実験と解析をし、論文投稿を行うこととした。また、重要な国際会議も開催されるため、それにも参加して、成果を発表したいと考えている。
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Research Products
(4 results)