2017 Fiscal Year Research-status Report
アロステリック制御を実現するタンパク構造の設計原理
Project/Area Number |
16K05518
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冨樫 祐一 広島大学, 理学研究科, 准教授 (50456919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FLECHSIG HOLGER 広島大学, 理学研究科, 研究員 (00758964) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アロステリック制御 / 分子内情報伝達 / 構造機能相関 / 生体高分子 / タンパク質 / 粗視化分子動力学 / 進化的最適化 / 計算生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アロステリック制御に不可欠な、構造変化を介した情報伝達を実現する設計原理を明らかにすることを目指し、初年度に引き続いて、解析的アプローチと構成的アプローチとの両面から研究を展開した。 解析的アプローチとしては、分子内での構造変化伝播を粗視化弾性ネットワークモデルを用いて評価する手法について、実際のアロステリックタンパクへの展開を進めている。前年度の段階でシミュレーションそのものは半自動化できており、無差別なシミュレーションは可能であるが、解析を含めた自動化(特にアロステリック制御に関わる部位を自動的に抽出してシミュレーション条件を設定する手法の開発)で生じた困難に対し、いったん対象とするリガンドを絞るなどして対策を試みている。 構成的アプローチでは、前年度の段階で、遠隔部位間で構造変化を伝える弾性ネットワークを進化的に生成し、その構造や力学特性と応答との関係についての解析を進めていた。今年度は、構造変化の伝播する経路や、変異(構造への摂動)に対する頑健性についてさらに考察を加え、成果を論文として出版した。さらに、アロステリック制御を可能とする構造がどのような過程を経て生成するかを考察すべく、進化的最適化において、構造の変異が力学的特性・伝達特性に及ぼす影響について、詳細な解析を進めている。 実際のアロステリックタンパク質との比較のため、前記した網羅的解析のアプローチのほか、いくつかの個別のタンパクで、伝達機構のシミュレーションによる解析を進めた。分子モーターF1-ATPaseについて、順序性のある動作に不可欠なアロステリック情報伝達経路を、全原子分子動力学計算を併用して解析し、成果を論文として公表した。また、複数の機能ドメインを持つ酵素(特に基質側も複数の結合部位を持つ場合、例:Pin1 PPIase)について、天然変性領域を含む場合などに対応してモデルを拡張しつつ解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初、研究代表者・分担者の異動等の影響で、研究が一時停止することがあったが、その影響からはほぼ脱しつつある。構成的アプローチによる研究については、当初計画以上に進展しており、これまでの成果を論文として公表した。一方で、解析的アプローチによる研究については、解析の自動化による困難から方針転換を図ったが、遅れが残っている。全体としては概ね想定した程度の進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
解析的アプローチによる研究で生じている自動化の困難に対して、データベースの活用や対象リガンドの絞り込みによる対策を行ってきたが、これにより、一般性・網羅性が弱くなった側面もある。また、天然変性領域を含む場合など、対象としては興味深いが弾性ネットワークモデルが不得手とする対象もある。これらの問題に対応すべく、他のモデル化・シミュレーション手法(格子モデルや全原子分子動力学計算等を含めた)の併用を始めている。今後もこの方向で改良を進め、上記の問題の打開に取り組む。
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Causes of Carryover |
想定外の支出が生じたため、研究発表等の旅費を大幅に縮減して対応したが、結果的に若干の残額が生じた。次年度、研究発表に必要な費用として有効に活用する。
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Research Products
(13 results)