2018 Fiscal Year Annual Research Report
水とイオンが駆動するタンパク質高次構造形成の統計力学
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16K05519
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 紀生 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10390650)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドメインスワッピング / 3D-RISM / MDシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、タンパク質の複合体形成機構の一つであるドメインスワッピングに着目し、3D-RISM理論と分子シミュレーションを用いて、ドメインスワッピングにおける水およびイオンの役割を明らかにすることを目的とした。 ドメインスワッピングとは、タンパク質同士が同じ領域を分子間で交換することにより複合体を形成する機構である。シトクロムc(cyt c)のドメインスワッピングには、イオンを含む溶液とタンパク質との相互作用が本質的な役割を果たすが、その取り扱いの難しさから理論的研究は全くと言って良い程なされておらず、分子論的な理解は進んでいなかった。そこで、当初研究計画では、3D-RISM理論と分子シミュレーションを組み合わせることで、水およびイオンの取り扱いの困難を克服した。 まず、モノマーおよびダイマーの平衡状態での安定性ついての研究を行った。この研究では、分子シミュレーションによりモノマーおよびダイマーの構造サンプリングを行い、得られた構造に対して3D-RISM理論を適用し、構造エネルギー、構造エントロピー、水和自由エネルギーおよび水和構造を決定した。この解析により、各残基ごとの安定化へ寄与が明らかとなり、二つのcyt cに挟まれた解離性残基の静電反発が大きな役割を果たすことが分かった。また、ダイマー形成によるcyt cの不活性化の原因となるヘム周辺の構造変化を原子レベルで明らかにした。(Yoshida* et al., J. Chem. Phys., 148, 025102, 2018) 続いて、陰イオンがダイマー形成に及ぼす影響について研究を行った。実験研究から、陰イオンの種類よりダイマー生成量が変化することが知られているが、溶媒和自由エネルギーにおよぼすイオンの影響を各残基ごとに分割することで、タンパク質構造とイオンの相互作用のイオン種ごとの違いを明らかにした。(Motoki, Yoshida, Hirota, Higashi, Abstracts of papers of ACS, 255, 65, 2018)
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Research Products
(19 results)