2016 Fiscal Year Research-status Report
氷結および非氷結水溶液の液体からガラス状態への動的階層構造
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16K05522
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新屋敷 直木 東海大学, 理学部, 教授 (00266363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木原 晋 東海大学, 理学部, 教授 (40191093)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 誘電緩和 / 水溶液 / 水 / 氷 / 高分子 / ガラス転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度コントロールシステムの改良:Impedance Analyzer(40Hz~110MHz)とImpedance Material Analyzer(1MHz~3GHz)の比較的高周波側の誘電率測定系の温度コントロールシステムを改良し、不要な温度分布を減らし、高粘性水溶液測定のハンドリングを改良した。 合成高分子水溶液を用い、non-Arrhenius/Arrhenius(non-A/A)転移がガラス転移温度に関係するのか、あるいは水の第2臨界点と関係するのかを調べた。合成高分子はpoly(vinyl pyrrolidone) PVP、を用いた。PVP水溶液は高分子濃度60%以上の濃度に調製した。PVP水溶液についてはPVP鎖の局所的な分子運動による緩和のガラス転移温度付近で水の緩和の緩和時間のnon-A/Aが起こった。また、PVP水溶液ではα緩和に対する水和水の寄与が小さいという結果が得られた。 水以外の高分子溶液における溶媒の凍結と高分子鎖の運動に関する研究を広帯域誘電分光法を用いて行った。水以外の溶媒の結晶化により、凍結濃縮された高分子鎖の運動を観測した。 純水を異なった方法で凍結させ、氷の緩和を観測した。その結果、攪拌しながらゆっくりと凍らせた氷と攪拌せずに凍らせた氷で全く異なる緩和時間を示すことを明らかにした。 低温で凍結する10-40%ゼラチン水溶液の誘電分光測定を広い温度・周波数域で行い、3種類の緩和を観測した。これらの緩和の濃度依存性より緩和時間の小さいものから不凍水、氷、水和したゼラチンの分子運動による緩和であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、①PVP水溶液のガラス転移に関する研究、②純水から作られた氷の調整方法による緩和の違いに関する研究、③高分子と有機溶媒混合系で溶媒の結晶化に伴う高分子鎖運動の変化に関する研究、④ゼラチン水溶液の不凍水、氷、水和ゼラチンの緩和に関する研究の以上の4報を平成28年度に発表した。平成29年度になり、さらに高分子水溶液の不透水の分子運動に関する研究と、氷結した1~5wt%ゼラチン水溶液の4種類の氷の誘電緩和を観測した研究の論文が受理された。 以上のように研究の進捗状況は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
合成高分子水溶液のガラス転移に関する研究についてはPVP水溶液以外に、poly(vinyl methyl ether) PVME、電解質高分子のpoly(ethylene imine) PEIの研究が進んでいる。これらの成果は一部学会および国際会議で発表したが、最終的な結論に至るための追加実験と解析を現在進めている。 氷結するタンパク質水溶液および氷結する合成高分子水溶液のBDS 測定を行う。合成高分子水溶液はPVP、PVME、PEI、Poly(ethylene glycol)(PEG)を用い、またたんぱく質水溶液はBSA、リゾチウム、ミオグロビン水溶液を用い、高含水率で不凍水緩和と水和した溶質の緩和を観測して氷結した水溶液と低含水率の氷結しない水溶液中のを比較し、これまでほとんど議論されていなかった氷結した水溶液中の複雑な挙動の普遍性と物質構造 依存性を、氷結しない水溶液の知見を基に明らかにする。 様々な水溶液でnon-A/A 転移が観測されているが、水以外の水素結合性液体で、non-A/A 転移の有無を調べる。本研究では、PVP を用い、propanol、propylene glycol、glycerol を溶媒としたPVP アルコール溶液のBDS 測定を行う。これらの分子は炭素数3 個が共通で水酸基数が1~3 個と異なる為、水素結合密度の違いも調べられる。試料は水溶液で凍結しないPVP 濃度65%以上の溶液を用い、水溶液との比較を行う事で水の特異性と考えられている「溶媒の主緩和のnon-A/A転移」と「溶媒とPVP の協同運動性」の有無を調べる。
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Research Products
(27 results)