2016 Fiscal Year Research-status Report
相分離状態の脂質膜に外来物質が誘起する孔構造の時間・空間解析
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16K05525
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
丹波 之宏 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50436911)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂質膜 / ポア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある種のペプチドや小分子は、脂質膜に構造変化を誘起し脂質膜に小孔(ポア)を形成させる。そのポアの形成メカニズムは興味深いが、ポアは小さく、また非常に短時間で形成される為に十分な検討が難しかった。しかし近年、フラボノイドの一種であるEGCgが誘起する巨大なポアの形成初期段階からの動的構造が明らかになりつつある。本研究では、ポアの形成位置に着目し、相分離状態にある脂質膜に外来物質が誘起するポアの動的構造を時間-空間の両面から調べる。これにより外来物質が形成するポアの形成メカニズムについての知見を深める。さて、脂質膜からなる巨大な単一膜ベシクル(GUV)にマイクロピペットアスピレーション法を用い人為的な引っ張り張力を与えた際に脂質膜に誘起されるポアの安定性については良く調べられている。そこで平成28年度は、まず液晶相(La相)と秩序液体相(Lo相)が混在する脂質膜からなるGUVに引っ張り張力を与え、脂質膜の安定性やポアの形成位置について調べた。さらに脂質膜の安定性を示す量の一つに線張力があるが、これをLa相、Lo相、それぞれからなる均一な膜系について調べ比較検討を行っている。また、均一な相の膜系において、ある種の抗菌性ペプチドがEGCg同様に巨大なポアを脂質膜に誘起することを見出した。これは本研究を進める上で有意なことである。今後はこれらの結果を踏まえ相分離状態にある脂質膜に外来物質が誘起するポアの動的構造を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは今年度が初年度となる。先ずGUVにマイクロピペットアスピレーション法を用い張力を加え、脂質膜の安定性を調べる実験系の構築を試みこれに成功した。さらに相分離状態にある脂質膜についても、その安定性について研究を行っている。均一な膜系においてではあるが、ある種の抗菌性ペプチドが光学顕微鏡にて観測可能な巨大なポアを形成することを見出した。当初計画では外来物質が相分離状態の脂質膜に誘起するポアについての知見を重ねる事を優先していたが、現在の進捗状況も研究目的に照らせば概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は当初計画では2年目以降に順次行う予定であった相分離状態の脂質膜に力学的張力を加えた場合の安定性についての研究が先行して進んでいる状況である。今後は外来物質が相分離状態の脂質膜に形成するポアの安定性についての研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
研究の当初計画に基づき、実験効率上昇の為に実験機器の設置を行った。その際に前倒し請求を行ったが、平成28年度は29年度に行う予定であった研究計画の進展等があり、余裕を持って多めに前倒し請求を申請したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度行った前倒し請求と、それにより生じた残額によって研究計画に大きな変更が加えられることはない。研究の進捗状況に合わせ、各種実験機器や試薬等の購入に充てていく予定である。
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Research Products
(1 results)