2016 Fiscal Year Research-status Report
第四紀と先カンブリア紀末の氷床変動に伴う海水準変動とマントル粘性率に関する研究
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16K05543
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中田 正夫 九州大学, 理学研究院, 教授 (50207817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マントルレオロジー / 氷床変動 / 地球回転変動 / Snowball Earth |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,第四紀と先カンブリア紀末(6億3500万年前のSnowball Earth期,マリノアン氷河時代)の氷床変動に伴う固体地球の変動を評価し, [i]第四紀の氷床変動に伴う地球回転変動と海水準変動からマントルの粘性率構造の評価,[ii]Snowball Earth期の氷床変動に伴う地球回転変動と海水準変動のモデリング,[iii]マリノアン氷床融解に伴う海水準変動に関する物理的考察,[iv] マリノアン氷床融解後の海水準変動によるマントルの粘性率の推定である。 課題[i]に関しては,粘性率の深さ依存性が異なる(1)BarbadosとBonaparte Gulf,(2)マイアミからバーミューダ,(3)オーストラリア域の海水準変動を,氷床域から離れた地域(far-field)の海水準変動を考慮した複数の氷床モデルに基づき解析した。これらの解析と,次数2の重力ポテンシャル係数の時間変化により,上部マントルの粘性率(1-4)x10^20 Pa s,下部マントルの粘性構造として670-1191kmで3x10^21 Pa s以上,1191-2891 km(core-mantle境界)で(5-10)x10^22 Pa sの結果を得た。さらに,次数2-6の重力ポテンシャル係数の時間変化を解析し,これらの時間変化が下部マントルの粘性率構造に重要な制約を与えることを示した。 課題[ii]に関しては,当時の大陸分布と大陸氷床を作成し,氷床融解に伴う海水準変動を評価するプログラムを作成した。最終的な結果はまだ得られていないが,マリノアン氷床融解に伴う海水準変動は第四紀の海水準変動と物理的観点から異なる可能性が得られた。今後はさらに研究を進め,マリノアン氷床融解に伴う海水準変動から下部マントルの粘性構造を推定し,第四紀の氷床変動の観測量から推定される粘性構造と比較検討を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題[i]に関しては,国際誌に論文を公表した。さらに課題[i]を発展させた次数2-6の重力ポテンシャル係数の時間変化を解析し,これらの時間変化が下部マントルの粘性率構造に重要な制約を与えることを示し国際誌に公表した(現在ウェブ掲載中)。 課題[ii]に関しても当初の計画を達成しAmerican Geophysical Union (AGU)のFall Meetingで成果を発表した。さらに,課題[iii]を現在実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題[i]をさらに発展させ,第四紀氷床変動に伴う観測量(海水準変動と次数2-6の重力ポテンシャル係数の時間変化)を,変形実験で未だ決められていない下部マントル物質の活性化エネルギー・活性化体積,及び,地球内部の温度分布による粘性率構造に基づき解析を行い,下部マントル物質の物性研究に観測データに基づく研究から貢献する。 課題[iii]に関しては,マリノアン氷床変動に伴う海水準変動の,海進→海退→海退に注目して研究を進める予定である。つまり,このような海水準変動パターンは当時赤道域(現在のナミビア)と高緯度域(現在の南中国)で観測され,前者は氷床融解中,後者は氷床融解後であることが観測から推定されている。本研究課題の予備的な結果によると,前者は氷床融解の期間や海岸線の形状,後者は氷床融解後の極移動に伴う海水準変動に強く依存することが示唆される。つまり,これらの地域の海水準変動パターンが氷床融解による海水準変動により定量的にシミュレートされれば,マリノアン氷床がどのくらいに期間で融解したか,第四紀とマリノアン氷床融解に伴う海水準変動が調和的な下部マントルの粘性率構造を与えるのかに関して議論可能である。 H29年度は上記の方策で研究を遂行する予定である。
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Research Products
(4 results)