2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05547
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
中川 貴司 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (50396941)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プレートテクトニクス / マントル対流 / 海洋進化 / 表層環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
表層環境進化の代表例として、地球における海洋質量の変化に着目し、海洋質量変化が内部変動起源であると仮定し、地質データならびに初期惑星進化データに調和的である表層環境ー地球内部共進化シナリオの探索を行っている.その結果、1.地球内部の熱進化にとって重要な物理過程であるマントル対流を駆動力とするプレートテクトニクスの発生・安定性について、含水化し、弱化した海洋地殻が重要な鍵を握っていることが明らかになった.また、プレートテクトニクスが活発に地球表層に起こることによって、表面の海洋が効率的に地球深部へひきづりこまれる現象を明らかにし、地質データや高温高圧実験における推定された地球内部が保持できる海水量がある程度妥当である可能性を示唆する結果が得られた.2.安定で活発であるプレート運動によって、効率的に海水が地球深部へひきづりこまれることにより、地球表層において、将来的に海洋が干上がる可能性をモデルシミュレーションから明らかにした.その結果、現在海洋をたたえた地球であるためには、少なくとも現在の地球の海水量の数倍から10倍の海水量を地球システム全体として保持する必要を指摘した.これは、地質データならびに初期惑星進化に関する分析データならびに理論モデリングによって算出された海水量と調和的であることがわかった.これにより、地球がプレートテクトニクスを持っていないと、今の海洋量の説明ができないことも明らかになった.3.しかし、初期惑星進化によって、マントルが得られた水は、現在のマントルが保持する水の量とは無関係であることが明らかになった.含水マントル鉱物において、その鉱物が保持できる最大の含水量の制約をモデルに取り入れることによって、初期惑星における熱構造によって、初期マントル内で脱水反応が活発に起こり、マントル内の水のほとんどが表層環境側に放出される可能性を示唆することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表層環境進化の一端として、海洋の進化に着目したモデル開発を進めることができた.その結果、海洋進化とプレートテクトニクスに代表される地球内部変動が密接に関わっていることが明らかになり、表層環境ー地球内部共進化の理解を進めることができた.特に、地球システムが持ちうる総海水量がプレートテクトニクスの発生・安定性に大きく影響しているという結果は、これまでの固体地球惑星ダイナミクスコミュニティが一丸となって、気候変動研究のコミュニティとの融合研究を行わないといけない必要性を投げかけている.その融合研究の一環として、気候変動を専門とする研究者と大気進化に関する議論を行うことで、大気進化の簡単な理論を習得し、脱ガス量と大気の光学的な厚さならびに対流圏の温度構造への影響を導入しようとモデルの改良を行っている.また、研究成果の公表に関して、国際会議での口頭・ポスター発表ならびに国際誌への論文発表を必要最低限行うことができた.特に、国際会議において、本研究で得られた研究成果は、固体地球惑星コミュニティーだけでなく、惑星科学や表層環境コミュニティーにも対しても、重要な寄与を与えている研究として位置付けられている.これらのことから、研究活動は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に開発した海洋ー地球内部共進化モデルをさらに発展させる.開発したモデルでは、表面温度が現在の地球大気温度で一定としているため、気候変動との関連性の議論が行えない.その議論を行うために、大気温度の影響をモデルに導入する必要がある.大気進化に関しては、簡単な灰色大気放射対流平衡によって、表面温度計算を行うことを試みる.断熱温度減率と大気の光学的な厚さに関して、脱ガス量から大気中の水蒸気分圧を計算し、二酸化炭素量を一定する単純化を行う.表層大気の温度変化によって、プレートテクトニクスの開始・安定性にどのような影響を与えるか、また、プレートテクトニクスが気候変動へ与えるフィードバックについての物理過程をモデルシミュレーションから明らかにしたい.また、10億年単位における地球磁場変動と気候変動の相関関係を明らかにし、地球システム進化を統一的に理解するために、コアダイナミクスに関するエネルギー変動のパラメータ化を行い、表層環境ーマントル共進化モデルに導入することを試みる.昨年度得られた研究成果に関して、論文化をさらに推し進めて、研究成果の効率的な公表を行っていきたい.
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Causes of Carryover |
当初、2月締切の招待レビュー論文の英文校正費として使用を予定していたが、論文作成に思いの外手間取り、年度内に英文校正を依頼することができなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、執筆している別論文の英文校正費ならびに5、6月に予定されている国際会議に出席するための出張費の一部に利用する予定.
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