2017 Fiscal Year Research-status Report
地表面から熱圏までをつないで気候変動に迫る,火星大気物理化学過程のモデリング研究
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16K05552
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
黒田 剛史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 統合ビッグデータ研究センター, 主任研究員 (40613394)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 火星 / 大気大循環モデル / 大気物質循環 / 大気化学 / 国際研究者交流・ロシア / 国際研究者交流・ドイツ / 国際研究者交流・ベルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は火星大気大循環モデルのダスト循環・水循環・化学過程について導入・改良を進めた。まずダスト巻き上げスキームを水平高分解能(グリッド間隔約67km)の火星大気大循環モデルに導入し、ダスト循環の再現を可能にした。ただし、重力波の励起に影響を与えるダスト対流を再現するにはより高分解能のシミュレーションが必要であることも合わせて示唆された。 また水循環・HDO/H2O同位体分別についても同様の水平高分解能シミュレーションから細かいスケールの大気の流れが反映されたシミュレーション結果の解析が進んでおり、合わせて進めている酸素量の水平・鉛直分布に着目した化学シミュレーションとともに、このモデルを用いた将来の超小型探査機などによる観測計画立案・科学提案に向けて着実に歩んでいるところである。水循環シミュレーションについては国際連携も進めており、ロシア・ドイツのチームと二峰性ピークを持ったエアロゾル粒径分布を雲核として仮定したシミュレーションを行い、その成果がJournal of Geophysical Research Planetsに掲載された。さらにベルギーのチームとは水循環モデル結果の比較を進めており、その進捗について学会発表を行った。 約38億年前の火星を想定した古気候シミュレーションでは、水循環スキームを液体の水(海の過程、降水・河川流量の計算)に対応させ、約38億年前の火星において液体の水が地表に存在しうる条件について、地表(海)の熱慣性が影響している可能性を示唆した。この結果については論文をIcarusに投稿し、現在改訂を進めている。 その他、モデルと電波掩蔽観測の連携により定常波や傾圧不安定波が冬極域のドライアイス降雪に与える影響の研究成果が、Journal of Geophysical Research Planetsに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の火星大気大循環モデルとその研究業績は世界で着実に評価を高めており、現在世界的に火星探査への機運が高まっている中で、観測プロジェクトへの協力や将来の火星有人探査・移住計画を見据えた「火星の天気予報」の実現に向け、幅広く共同研究の声がかかっている状態である。今年度はダスト循環・水循環の整備に加え大気化学過程の導入にも着手するとともに、火星古気候研究においても重要な成果を挙げたことにより、申請者の火星大気大循環モデルはより学術的・社会的な価値を高めた。よって、研究の目的達成に向けた進展状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
火星下層~中層大気における重力波の励起と伝播、MAVENデータ解析結果の解釈、火星古気候における積雲対流や氷河の影響などのトピックについて論文の執筆を進めており、投稿が予定されている。また2016年10月に火星周回軌道に投入されたExoMars Trace Gas Orbiterが水同位体比や微量物質分布の本格観測に入るのと合わせて、申請者の火星大気大循環モデルが観測結果解釈のツールとなるように引き続き水循環・化学過程の改良を進め、論文投稿に向けたモデル・観測連携を進める。さらに超小型衛星を活用したテラヘルツ測器による酸素分布のマッピングや「火星の天気予報」実現に向けた火星観測網の充実など、今後申請者が主導的立場で関わる観測計画に資するモデルの改良を進め、また太陽系外を含む他惑星にこのモデルを適用させてのハビタビリティ研究への発展も見据え、本研究の学術的・社会的価値をさらに高める。
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Causes of Carryover |
予定していた論文投稿が遅れた影響で、406,950円の次年度使用額が生じた。今後の論文投稿料に充てる。
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Research Products
(14 results)