2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05556
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
沢田 雅洋 気象庁気象研究所, 台風研究部, 研究官 (90466524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 耕介 琉球大学, 理学部, 助教 (10634123)
山口 宗彦 気象庁気象研究所, 台風研究部, 主任研究官 (80595405)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 台風 / 数値モデル / 自然災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
台風強度は統計力学モデルや簡易力学モデル、精緻な数値予報モデルによる予報を単体で用いるよりも、それらを組み合わせると最も予報精度が良いことが知られている。本研究では、環境場の外的要因と台風の内部力学(内的要因)の役割に着目して、各モデルがどのような事例に対して台風強度変化を捉えられるのかを明らかにする。 昨年度に引き続き、統計力学モデルSHIPSや簡易力学モデルCHIPS、精緻な数値予報モデルによる台風強度予報の比較を行い、それらを単純に平均することでどの単体のモデルと比べても精度が概ねよくなるが、それぞれの重みを変えることでさらなる改善が得られた。興味深いのは、各予報時間によって最適な重みが変わることである。統計力学モデルは予報時間が短い時の重みが大きく、急発達が不得手と考えられている統計力学モデルで短期予報の重みが大きいことが意外である。一方、数値予報モデルは予報時間が長いほど大きくなる傾向が見られた。これは数値予報モデルにおいて、初期の強度変化再現性と数値モデルの入力となる初期値の精度の両方に課題があることを示唆する。 数値予報モデルそのものの特性についてより詳細に調べるため、いくつかの数値予報モデルとの比較・検証も行った。その結果、数値予報モデルで使われる水平解像度や海洋結合が重要であることが示唆された。強い台風ほど、数値予報モデルの初期値に大きな過少バイアス(台風が弱めであること)が見られた。これは初期値に利用される解析値が台風を表現するには水平解像度が不十分であると考えられた。また、検証に使用されるベストトラックにより、検証結果が変わり得ることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で利用する台風強度予報データ(SHIPS、CHIPS、3次元数値予報モデル)が得られており、それらの比較・調査を行い、それぞれのモデル(ガイダンス)の強み・弱みが得られ始めている。 査読付き論文1編、査読無し論文2編、招待講演3件を含む口頭発表6件、ポスター発表2件、報道発表4件を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.異なる3つのモデル比較を通じて、3次元数値予報モデルによる再現性が良い事例・悪い事例の解析を行い、台風強度に対する内的要因の役割、不確実性を調べる。 2.各モデルで計算されたアンサンブル予報による不確実性の比較を行い、各モデルにおける不確実性の共通点・相違点を取りまとめる。 3.平成28・29年度に行った3つのモデル比較から見出された3次元数値予報モデルの弱点を考察し、モデル改良への知見を得る。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況:予定していた出張期間が短くなったこと、見積時の航空券費用より低く購入できたため。 使用計画:国内外の出張による研究成果の公表と情報収集に使用。
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