2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05567
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三澤 浩昭 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90219618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 史紀 東北大学, 理学研究科, 助教 (10302077)
加藤 雄人 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60378982)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 木星 / 放射線帯 / シンクロトロン電波 / 電波観測 / 短期変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
木星放射線帯の高エネルギー電子(HE電子)から放射されるシンクロトロン電波(JSR)の観測から、その強度が1日で数10% 以上変化し 、数日スケールで繰り返し起こる「極短期変動現象」が存在する可能性が示されてきた。このことは木星放射線帯で、未知の大規模な変動が短時間に生じている可能性を示唆している。本研究では、JSR観測による極短期現象の出現特性の探査[課題1] 、科学街星の観測データに基づく木星磁気圏状態~SLEの探査[課題2] 、および、米国の木星探査機JUNOの観測・解析データも加えた極短期変動現象に関わるHE電子の加速過程の考察[課題3]に基づき、極短期変動現象の起源の究明を目指して行ってきた。H29年度は以下の研究を実施した。 [対 課題1] JSR観測による極短期変動現象の検出:H29年5月に5日間、12月に10日間、情報通信研究機構(NICT)の電波望遠鏡を用いてJSR観測を実施した。また、インドの電波干渉計を用いた観測を同期間内にスポット的に実施した。ともに解析中であるが、既に短期変動源として同定されている太陽紫外線の変動は両期間で10%未満であることが確認され、期間の長い12月の観測を重点的に調査している。また、観測帯域に混入する人工雑音を取り除いて有意なJSR強度を得るための観測機器・手法の開発を継続実施した。[対 課題2] 米国のWIND衛星で観測された数100KHz~数MHz帯の木星オーロラ電波の解析から、SLEに同期した電波成分が存在することを明らかにした。更に、この電波成分を手掛かりにしてこれまで行ったJSR観測の結果との照合を精査中であるが、H28年度実施の観測期間にSLEに同期した電波成分が確認されており、慎重に照合を進めている。[対 課題3] 公開されたJUNOのデータを用い、JSR観測実施期間とその前後の木星磁気圏の状態を調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度に計画した観測・解析課題について、研究目的の[課題1]については、東北大の観測装置の不具合で低周波数側のJSR観測は計画通りには実施出来なかったが、NICTとインドの大型装置を用いた観測は実施出来、やや高めながら、高エネルギー電子の情報は得られることとなった。一方、データ解析はやや遅れており、平成30年度の課題となった。[課題2]については計画していた以上の進展があり、SLEとの関係が示唆されてきた科学衛星で観測される電波が、確かにSLEの発生を示すものであることを示すことが出来た。この結果を受け、JSR変動と科学衛星の観測から得られる電波変動の比較照合を進めており、H29年度には、H28年度に実施したJSR観測時にSLEの発生があったことを確認した。JSR変動との比較照合結果は、JSRデータ解析の遅れから平成30年度の課題となった。[課題3]については、 公開されたJUNOのデータの解析も進行中であり、計画されていたJUNOのデータを用いたJSR極短期変動現象への太陽風変動の影響評価は平成30年度の課題となっている。以上、3つの課題についてそれぞれ進捗したが、[課題3]はほぼ予定通り、[課題2]は計画以上の進展があった一方で、[課題1]の極短期変動を示すJSR変動と[課題1,2]とを対応させた考察は、JSR変動の解析が途上であることから遅れており、全体としては”計画からはやや遅れている”と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的の[課題1~3]について以下の研究を予定し、成果発表も行ってゆく。 [対 課題1] H30年度は木星が衝付近となる8月頃迄が観測好機となる。申請者所属機関の観測装置故障のため、低周波数域での観測は名古屋大学の装置(過去観測実績有り)、高周波数はH28, 29年度同様にNICTの装置を用いて、木星探査機が木星近傍の観測を行う5月下旬と7月中旬にキャンペン観測を行う。また、H28,29年度に実施したJSR観測データの解析も継続し、特にSLEに同期した電波成分が確認され、インドの大型干渉計のデータも含まれるH28年度のデータについて詳細解析を進める。尚、観測データから人工雑音成分を確実に弁別し、有意なJSR強度を導出するための装置・手法の開発を完成させ、JSR観測に適用する。 [対 課題2] H29年度に明らかにした数100KHz~数MHz帯の木星オーロラ電波中のSLEに同期した電波成分の存在について、成果として公表する。また、この電波成分を手掛かりに、H30年度分も含めてJSRの観測結果との照合を更に進め、JSR観測データ中の極短期変動現象とSLE現象=木星内部磁気圏プラズマの大規模変動との関連を究明してゆく。 [対 課題3] H28,29年度分も含めてJSR観測期間の木星探査機JUNOの観測データ解析を進め、極短期変動発生時の磁気圏各領域の粒子、磁場、プラズマ波動の様相を精査する。特に極短期変動の発生時と非発生時の差異に着目し、極短期変動に特有な磁気圏状態を定量的に導出する。また、干渉計観測データに極短期変動期間が含まれる場合には、極短期変動に特に関わると想定される領域(高緯度域と赤道域)の変動様相を精査すると共に、その領域に接続する磁力線に沿った領域の磁気圏プラズマの状態変化を精査し、HE電子の極短期間での生成過程を考察し研究を総括する。
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Causes of Carryover |
理由:H29年度研究では、JSR観測の周波数帯域に混入している人工電波の弁別を行い、JSR電波成分のみ選択的に得るために有効な新たな装置と観測手法の開発を実施したが、複数の装置、手法の評価に時間を要し、当初購入を予定していた装置の購入には至らなかった。この未購入が主原因で次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度に引き続き評価を行い、繰越額をJSR電波観測用の新たな広帯域計測装置構築のための物品費として活用する予定である。
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Research Products
(4 results)